これまで更年期障害は女性特有のものと考えられてきました。しかし、最近は個人差こそあるものの、男性にも更年期障害があることが明らかになっています。この記事では、更年期障害があらわれる年齢とともに、男性と女性の症状について解説します。
女性の更年期障害が起きる年齢は?
- 女性の更年期障害は、一般的に40代後半から50代前半に起こると言われている
- 原因は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の減少
- 女性ホルモンが減少すると、月経(生理)不順やほてり、のぼせといった症状が出てくる
女性の更年期障害の主な症状
突然のほてり、のぼせ
- ホットフラッシュとも呼ばれる
- 突然顔が熱くなったり、首や背中などから汗が流れたりする
- 手足が冷えてしまうこともある
- 自律神経の乱れが原因
イライラ、不安感
- 感情の波が激しく、自分でもコントロールできない状態になる
- 集中力の低下や、無気力状態がみられることもある
肩こり、腰痛、頭痛
- 自律神経が乱れて血液循環が悪くなるために起こる
- 昔から頭痛持ちだった方、月経(生理)前後に頭痛になることが多かった方にみられる
めまい、耳鳴り
- 自律神経の乱れで血圧が安定しなくなると起こる
疲労倦怠感
- 更年期でホルモンバランスが崩れ、全身のだるさや疲れやすさといった症状がみられる
性生活の変化
- ホルモンバランスが崩れると腟の乾燥や委縮が起こるため、性行為中に痛みを感じやすくなる
- 性欲の低下や、性行為が苦痛になることもある
男性の更年期障害が起きる年齢は?
- 男性の更年期障害も、女性と同じく40代後半から50代前半に起こることが多い
- 女性と異なるのは、男性ホルモン(テストステロン)は緩やかに減少することが多いこと
- このため、症状があらわれる時期や程度は女性以上に個人差がある
男性の更年期障害の主な症状
筋力の低下、疲労感
- 男性ホルモンの減少によって筋肉や骨を丈夫にする働きが弱くなり、筋力低下やそれに伴う筋肉痛、疲労感があらわれる
- 女性と同じく、ほてり(ホットフラッシュ)や発汗、頭痛、めまいといった症状もみられる
抑うつやイライラ、不眠
- 男性ホルモンの減少によってネガティブな感情をコントロールする働きが弱くなり、不安を感じやすくなったり、ささいなことでイライラしたりする
- 抑うつや不眠、それに伴う集中力や記憶力の低下などもみられる
ED、性欲減退
- テストステロンには、ドーパミン(興奮作用のある神経伝達物質)を増やす効果がある
- テストステロンが減少すると、ED(勃起不全)や性欲の減退といった症状がみられる
30代で更年期障害がみられる可能性は?
- 更年期障害はホルモンの減少によって40代後半から50代前半にあらわれる症状のため、30代で発症することはない
近年、男女を問わず20代から30代の方に、更年期障害のような症状に悩まされる方がいます。ただ、その原因として考えられているのは、生活習慣の乱れ(不規則な生活、睡眠不足、過度のストレス、運動不足など)です。
まとめ:更年期障害があらわれる年齢は男女とも同じです
- 更年期障害が始まる年齢は、男女とも40代後半から50代前半である
- 症状も男女ともほぼ同じだが、男性はエストロゲンの減少がゆるやかなため、女性以上に症状の現れ方に個人差がみられる
- 30代で更年期障害のような症状がみられるのは、生活習慣の乱れによるもの
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
更年期は女性に特有の症状と思いがちですが、最近では男性にも更年期障害のような症状(LOH症候群[late onset hypogonadism:加齢性腺機能低下症])があらわれることが指摘されています。
男性更年期障害は、主にテストステロンの低下によって起こります。この低下は加齢とともに起こるため、ある程度避けられないものと言えます。ただ、LOH症候群の方には、加齢に加えて睡眠不足や栄養不足などがみられることも指摘されています。
LOH症候群はまだあまり認知されておらず、診断されにくい疾患ですが、発症すると生活の質の低下につながります。まずはLOH症候群という病気があることを認識するとともに、悩みを訴える方にこの症状が当てはまるかどうかを検討することが大切です。