不安神経症を発症すると、不安や恐怖が強くなって心と体にさまざまな不調があらわれるようになったり、日常生活に支障をきたしたりすることがあります。この記事では、不安神経症の症状について解説したあと、治療する際に使われる薬や、薬以外の治療法を解説します。
不安神経症とは
- 日常生活のなかで根拠のない不安や恐怖、心配事がつきまとう病気
- 主な症状
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- 慢性的に「外出先で事故に遭うのでは」「自分が病気になるのでは」といった不安を感じる
- 心身の不調がみられ、日常生活に支障をきたすこともある
もともと不安神経症と呼ばれていたこの病気は、1980年に米国精神医学会の診断基準でパニック障害と全般性不安障害に分類されています。
パニック障害
- 突然訪れる強い恐怖や不安によって、動悸やめまい、呼吸困難といった発作に襲われる
- 発作が起こりやすい状況を把握している
- 10分ほどでピークを迎え、その後30分以内に症状がおさまる
- 最初に発作が起こるきっかけはストレスや過労。その後は予期不安(再発するのではないか、と過剰に心配する状態)で発症することもある
全般性不安障害
- 日常生活の漠然とした不安や心配を絶えず持ち続け、落ち着かない
- 発作がいつから始まったのか、はっきりわからない
- あらゆる出来事が不安の対象になる
- いつまでも深刻に悩み、自分では感情をコントロールできなくなる
- 男性より女性のほうが発症しやすい
不安神経症の症状の特徴は?
不安神経症の症状は、精神症状、身体症状、行動的症状の3つに分類できます。いずれの症状も3カ月以上続くのが特徴です。
精神症状
- イライラする
- 眠れない
- 落ち着きがなくなる
- 緊張状態が続く
身体的症状
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 発汗
- 頻脈
- 口が渇く
行動的症状
- 最悪な事態を恐れて不安な状況を避ける
- 最悪な事態を防ぐための準備に、生活に支障をきたすほどの時間や労力を費やす
- 何度も安心したがる
- 心配事を理由に、物事を決断できなくなる
特に多い症状は、寝つきの悪さや落ち着きのなさ、筋肉の緊張、過度な心配、イライラです。
不安神経症の治療で使う薬
薬物療法
- 不安症状の軽減やコントロールのため、抗不安薬や抗うつ薬による治療を行う
- これらの薬は2~4週間ほど服用する
- 抗不安薬と抗うつ薬を併用することもある
- 抗不安薬:ベンゾジアゼピン系抗不安薬
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- 不安神経症を発症している方の脳内は、神経伝達物質であるGABAやセロトニンのバランスが乱れていると考えられる
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用することで、GABAの働きを強めて脳内の活動を抑えるとともに、不安や緊張を緩和する
- 抗うつ薬:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
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- 不安を感じやすい方は、脳の偏桃体が活性化しすぎている傾向がみられる
- SSRIを使ってセロトニンの量や脳内の扁桃体の活動バランスを整えることで、不安症状の改善を目指す
薬を使わない不安神経症の治療法
不安神経症の治療法として、薬物療法のほかに認知行動療法があります。
認知行動療法とは
- 不安や心配事に対する考え方や対処方法を学び、自力でコントロールを目指す方法
- 環境刺激であるストレスとその反応である感情や認知、行動の変化などが及ぼす影響を学び、生じている悪循環を断つことで症状の改善や問題の解決を図る
不安神経症になると、不安や緊張、イライラなどの感情や、頭痛やめまいなどの体の反応を意識してコントロールするのが難しくなります。認知行動療法では、不安や恐怖のもとになる「大きな災難に遭うのではないか」などといった考えを見つけ、これを現実的・客観的に否定し、適切な考えに置き換える認知再構成を行ないます。
そのほか、薬物療法と組み合わせて以下のような治療法を取り入れると、症状緩和の効果が高くなると考えられています。
- 薬物療法と組み合わせて行う治療法
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- 呼吸をコントロールする訓練(過呼吸症状の悪化を防ぐ)
- リラクゼーション(不安症状を和らげる)
- バイオフィードバック法(脳波や筋電図を見ながら、どのような状況で落ち着いたり緊張したりするかを把握し、その人の特徴に合ったリラックス法を習得する)
まとめ:不安神経症の治療は、抗不安薬・抗うつ薬の服用を中心に、それ以外の方法も組み合わせて行われます
- 不安神経症は、特定の不安に対してだけではなく、次から次へと不安を生んでしまい、悪循環に陥りやすい状態
- 治療では、ベンゾジアゼピン系抗不安薬やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われる
- 薬物療法と並行して、認知行動療法やリラクゼーション、呼吸訓練が行われることもある
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
不安神経症の薬剤として抗不安薬やSSRIがよく使用されており、一定の効果が認められます。しかし、これらの薬剤は不安を感じることに対する根本的な解決にはなりません。薬剤には依存性や副作用があるものもあるため、並行して不安に対する対処法をトレーニングし、不安自体を軽減することもとても大切です。