疲れたからといって、甘いものに頼りすぎるのもよくないって本当?

「疲れたら甘いものを食べるとよい」と言われる一方で、「甘いものを食べると太る」「生活習慣病の原因になる」と言われることもあります。結局のところ、疲れたときに甘いものを食べるのは体にどんな影響を与えるのでしょうか。

疲れてくると甘いものが食べたくなるのはどうして?

  • 疲れると甘いものが食べたくなるのは、脳や体が失ったエネルギーを早く回復させようとするため
  • 甘くない食べ物や、糖質を含まない食べ物からエネルギーを補うこともできるが、食べた後、分解・吸収されてエネルギーとして利用できるまでに時間がかかる

脳や体がエネルギーを大量に消費すると、肝臓に蓄積されていたグリコーゲン(糖分エネルギー)がなくなり、血液への糖分補給ができなくなって血糖値が下がります。血糖値が下がるとブドウ糖(糖分を分解したもの)を脳や体に送ることができなくなります。その結果、ブドウ糖だけがエネルギー源となる脳が十分に働かなくなり、思考力や集中力が低下します。また、動くのもだるくなるほどの疲労感も出てきます。

こうした状態になるのを防ぐため、血糖値が低下すると甘いものが欲しくなります。特に、ブドウ糖を摂取するとすぐに血液に溶け込んでわずか数分で血糖値を回復させ、全身の臓器にエネルギーを届けることができます。

甘いものを食べると幸せな気分になるのはどうして?

  • 甘いものを食べるとホッとしたり、幸せを感じたりするのは、脳内で「セロトニン」が増えるため
  • セロトニンはホルモンの一種で、精神を安定させる作用がある
  • セロトニンは、トリプトファン(アミノ酸の一種)から作られる

甘いものを食べるとトリプトファンが優先的に脳内に届けられ、セロトニンが増えて幸せを感じやすくなる、と言われています。

ただし、甘いものの食べすぎには要注意!

  • 甘いものを摂りすぎると、今度は血糖値が上がりすぎてしまい、インスリン(血糖値を下げるホルモン)が大量に分泌される
  • その結果、次に急激に血糖値が下がって集中力・思考力の低下や疲れを感じる状態が続いてしまう

疲労回復に効果的な食べ方は?

  • 血糖値の急激な上昇を防ぐには、時間をかけてゆっくり味わいながら食べる

時間をかけて食べると体内に入る量が少なくなるため、血糖値の急激な変動を防ぐことができます。

おすすめの食べ物

  • 果物
  • 梅干し・レモン・お酢など、クエン酸を含むもの
  • 発芽玄米、トマト、きゅうりなど、GABA(アミノ酸の一種)を含むもの

果物は血糖値を上昇させにくい食べ物です。中にはパイナップルやすいかなど、血糖値を上昇させやすいものもありますが、それでも焼き菓子や菓子パンに比べるとその程度はゆるやかです。ドライフルーツもおすすめですが、中には砂糖や油を使ったものがありますので、無添加のものを選びましょう。

クエン酸が豊富な食べ物を摂ると、体内のエネルギー代謝経路である「クエン酸回路」を活性化させてエネルギーを効率よく作ることができるので、細胞の修復を早めて疲労回復を促します。そして、GABAには興奮した神経を落ち着かせ、リラックスさせる働きがあるので、デスクワークや根をつめた作業で疲れたときにおすすめです。

まとめ:疲れたときに甘いものは間違いではないが、摂りすぎに注意を

  • 疲れたときに甘いものを食べることは間違いではない
  • 特に、脳はブドウ糖を主なエネルギー源とするため、脳が疲れたときに甘いものが欲しくなるのは当然
  • ただし、甘いものを一気に食べると血糖値の急激な変動を引き起こし、かえって疲れを感じやすくなる
  • ゆっくり食べる、GI値の低いものを選ぶなどして、血糖値の急激な変動を抑えつつ、疲労回復に努めることが大事

医師から薬剤師の方々へコメント

山本 康博 先生
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生

疲れたときに甘いものを食べたくなるのは、エネルギーの不足に対する自然な反応と言えます。甘いものは効果的に疲労を回復できるので仕事のパフォーマンスを回復させるのに有用です。

しかし、過度に血糖値を変動させることは、さまざまな好ましくない反応を引き起こしますので、その反応ができるだけ起きないように戦略的に甘いものを利用するのがよいでしょう。過度な血糖値の上昇を防ぐためには、食物繊維が含まれたものを選んだり (線維の多いフルーツは好適です)、一緒に繊維質のものを食べるのがよいです。

それが難しい場合は、食後にオフィスで軽く散歩したり階段をのぼるなどの運動を行うと、血糖値の上昇がゆるやかになるとされています。どこでもできるのでおすすめです。