糖尿病を発症すると、合併症を引き起こしたり、傷の回復が遅れたりすることがあります。また、インフルエンザ発症後の経過にも影響を及ぼすことも明らかになっています。この記事では、糖尿病とインフルエンザの関連について解説します。
糖尿病だとインフルエンザが重症化しやすい理由
- 糖尿病は病気の回復や免疫機能に影響を及ぼすため、インフルエンザが重症化しやすい
- 高血糖になると白血球の働きが低下して免疫反応が弱くなるため、インフルエンザへの抵抗力も弱くなって肺炎などの合併症を引き起こしやすくなる
インフルエンザが高血糖を招く?
- インフルエンザを発症すると、一時的に血糖値が上昇することがある
- 血糖値が上がっても糖尿病が悪化したわけではなく、インフルエンザが治れば元の数値に戻る
- ただし、もともと血糖値が高かった場合、血糖値の上昇が糖毒性を招き、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群を起こす可能性がある
インフルエンザに注意したほうがよい方
- 血糖コントロールが正常でない方(HbA1cが高い)
-
- インフルエンザを発症すると高血糖になるため、血糖コントロールが難しくなる
- 糖尿病の合併症がある方
-
- 特に腎臓の機能低下や神経障害がある方は、体の抵抗力が弱くなっているため注意が必要
- 糖尿病の高齢者
-
- 脱水症状や意識障害など、重症に陥る可能性がある
- 喉の渇きなど体調の変化を見逃さないようにする
- 糖尿病の乳幼児、児童
-
- 子供がインフルエンザにかかると、短期間で呼吸困難や意識障害など重症に陥る恐れがある
- 糖尿病を発症している場合はさらに注意が必要
インフルエンザにかかったときの対処法
担当医に伝えたい4つのポイント
- 糖尿病であること
- 治療内容
- 使用中の薬
- 血糖値の測定結果(自分で計測している場合)
自宅療養の注意点
- 重症化と周囲への感染を防ぐ
- 解熱後、最低でも2日間は外出を控える
- 重症化防止のために
-
- 処方薬は医師や薬剤師の指示通り服用する
- 自己判断でインフルエンザの治療を中断しない
- 自己判断で糖尿病の治療も中断しない
- 血糖値を体温を測定して記録する
- 体を冷やさない
- 安静にする
- 水分補給はしっかりする
- 食事はなるべく普段通り摂取する
- 感染拡大を防ぐために
-
- 感染した方と部屋を分け、接触する機会をできる限り減らす
- 共用スペースではマスクを着用する
インフルエンザを予防するためにできること
予防接種
- 予防接種を受けたところ、糖尿病患者の20%にインフルエンザ発症による入院リスクが減少した、という研究結果が報告されている
手洗い
- 石けんを使用し、指の間、爪の間、手首まで丁寧に洗う。流水で15秒以上すすぐ
- 手を洗うのが難しい状況にいるときは、アルコール消毒液などを使う
うがい
- 口の中の雑菌を洗い流す(水うがいでも効果は期待できる)
掃除
- 感染経路になりやすい場所はアルコール消毒などで清潔を保つ
- ドアノブ、テーブル、イスの背もたれ、テレビのリモコン、パソコンのキーボード、携帯やスマートフォンはこまめに掃除する
- 感染者が使ったティッシュなどにウイルスが付着していることもあるため、ビニール袋などに入れて捨てるとより予防効果が期待できる
- 掃除後は手を洗う
そのほか、糖尿病を悪化させないことも大切です。日々の体調管理や血糖コントロールを続けるとともに、不安なことや不調を感じたら医師に相談してください。
まとめ:感染予防とともに、血糖値のコントロールにも取り組みましょう
- 糖尿病患者はインフルエンザの長期化・重症化のリスクが高いため、感染予防に取り組むことが大切
- もし感染したら、受診先の医療機関に糖尿病患者であることを伝え、医師の指示に従って治療する
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
糖尿病の方はインフルエンザにかかりやすく、逆にインフルエンザ感染は血糖コントロールを悪化させます。インフルエンザを防ぐ、最も有効な手段はワクチン接種です。特に糖尿病のかたとそのご家族は、忘れずにワクチンを接種するように薬局でもお伝えいただくと良いと思います。