日本呼吸器学会が2017年に発表したガイドラインでは、65歳以上の高齢者に対し肺炎の予防接種を受けることを強く推奨しています。この記事では、高齢者だけでなく、大人が肺炎の予防接種を積極的に受けたほうがよい理由を解説します。
大人が肺炎の予防接種を受けるべき理由
- 健康で免疫力の高い大人であれば、肺炎を発症・重症化させる可能性は低い
- 一方、心臓疾患を持つ方や高齢者など、体の免疫力が低下している方の場合は肺炎を発症しやすくなる
- 肺炎球菌による肺炎は日常生活のなかでかかりやすく、一度発症すると重症化しやすい
代表的な肺炎の原因菌である肺炎球菌は90種類以上あり、肺炎以外にも髄膜炎や中耳炎、副鼻腔炎などの感染症・炎症も引き起こします。普段は主に子供の喉や鼻の粘膜に棲みつき、くしゃみや咳で感染を拡大します。
肺炎の予防接種を受けるべき大人は?
- 65歳以上の高齢者
- 心臓疾患、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病などの持病を持っている方
- 過去に何らかの理由で脾臓摘出の手術を受けた方
特に65歳以上の高齢者は、年齢とともに確実に体の免疫力が低下しています。本人はまだ元気なつもりでいても、ちょっとした体調の変化から肺炎を発症しやすいだけでなく、急激に重症化することも少なくありません。
予防接種を受けるタイミング
- 健康で、かつ、過去5年以内に肺炎球菌ワクチンを接種していない場合、年間を通して肺炎球菌ワクチンを接種できる
- ただし、過去に肺炎球菌ワクチンを接種していても、以下いずれかの条件に当てはまる場合は再接種できる
再接種が必要な方
- 免疫機能に大きくかかわる血液やリンパのがんを発症した
- 免疫機能に大きくかかわる脾臓の摘出手術を受けた
- 前回のワクチン接種から5年以上が経過している
なお、治療中および治療直後は免疫機能が低下しているため、ワクチンを接種しても肺炎球菌への十分な免疫を獲得できない可能性があります。この時期に肺炎球菌ワクチンの接種を考えている場合は、必ず主治医に接種時期を相談してください。
肺炎球菌ワクチンの定期接種を受けられるのは?
- 肺炎球菌ワクチンは、予防接種法に基づき自治体が実施する定期接種制度の対象
- 2019年現在、過去に成人用肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方に限り、公費助成でワクチンを接種できる
- 肺炎球菌ワクチンの定期接種対象となる方の年齢
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- 65歳
- 70歳
- 75歳
- 80歳
- 85歳
- 90歳
- 95歳
- 100歳以上
たとえば、2019年に65歳を迎える方の場合、2019年4月~2020年3月までの1年間(2019年度)に1回、公費助成で定期接種を受けられます。
なお、受けられる公費助成の内容や、定期接種の実施時期は自治体により異なります。詳しくはお住まいの自治体に確認してください。
まとめ:肺炎の発症と重症化予防のために、高齢者の肺炎予防接種は欠かせません
- 肺炎の中でも肺炎球菌による肺炎は、日常のなかで感染しやすく、重症化しやすい
- 特に、65歳以上の高齢者、持病を持つ方にはワクチン接種が強く推奨されている
- 自身や家族の年齢・体調・病歴に合わせて、適切なタイミングで接種する
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
最新の報告 (Lancet Infect Dis. 2017 Jan 23.)では、23価肺炎球菌ワクチンは65歳以上の肺炎球菌肺炎を3割減少させることが示されています。
肺炎球菌ワクチンを受けたからと言って、すべての肺炎球菌感染症を防ぐわけではありません。ただ、肺炎球菌感染症は非常に重症化しやすく、高齢者が命を落とす一因となっていることを考慮すると、社会的には大きな効果があると言えると思います。「ワクチンを打ったけど肺炎になっちゃって…」とおっしゃる方もよくいらっしゃったときは、上記のように説明していただくと良いと思います。
なお、インフルエンザワクチンも50%の予防効果があるので完全に防ぐわけではありませんが、「2回かかるところが1回で済む」程度の効果がある、と説明していただくとよいと思います。