不眠症になると、症状に合った睡眠薬が処方されます。この記事では、睡眠薬の種類や起こり得る副作用、服用時の注意点について解説します。
睡眠薬とは
- 不眠症状(寝つきが悪い、眠りが非常に浅いなど)を軽減・改善し、深い睡眠や入眠を助ける目的で使われる薬の総称
- 中枢神経系のGABA-A受容体に作用して、脳と体の広範囲にわたって睡眠の導入と持続を助ける
- 処方薬と市販薬、どちらでも入手可能だが、いずれも中枢神経に作用する薬剤であるため向精神薬に分類される
睡眠薬の種類
超短時間型
- 特徴
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- 服用から薬が作用する時間が短く、睡眠導入剤に分類されるもの
- 半減期(薬が体内で代謝し、排出されるまでにかかる時間)は2~4時間
- 超短時間型に分類される睡眠薬の種類
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- ゾルピデム
- トリアゾラム
- ゾピクロン
- エスゾピクロン
短時間型
- 特徴
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- 薬の服用後、作用するまでの時間が比較的短いもの
- 半減期の目安は6~12時間
- 短時間型に分類される睡眠薬の種類
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- ブロチゾラム
- ロルメタゼパム
- リルマザホン
中時間型
- 特徴
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- 薬を服用後、作用するまでの時間が比較的長いもの
- 半減期の目安は12~24時間
- 中時間型に分類される睡眠薬の種類
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- フルニトラゼパム
- ニトラゼパム
- エスタゾラム
- ニメタゼパム
長時間型
- 特徴
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- 薬を服用後、作用するまでの時間が最も長いもの
- 効き目が長い分、半減期の目安も長い(24時間以上)
- 長時間型に分類される睡眠薬の種類
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- クアゼパム
- フルラゼパム
- ハロキサゾラム
「超短時間型」「短時間型」の睡眠薬は、特に一時的な不眠や寝つきの悪さといった睡眠障害のときに処方されます。一方、「中時間型」「長時間型」の睡眠薬は、睡眠障害が慢性的に続いている方に処方されます。一般的には超短時間型・短時間型の睡眠薬から始め、症状や効き目に応じて中間型・長時間型の睡眠薬に切り替えていくことが多いです。
睡眠薬服用時の注意点は?
- 医師または薬剤師に指示された用法・用量を必ず守る
- 自己判断で摂取量の増量や服用の中止は絶対にしない
- 必ず水かお白湯で飲む
- お酒と一緒に服用しない
睡眠薬で起こり得る副作用は?
持ち越し効果
- 起床後も睡眠薬の効果が続き、寝ざめの悪さや倦怠感が残ってしまうこと
- 特に、中時間型・長時間型の睡眠薬の使用でみられる
記憶障害
- 記憶があいまいになったり、一時的に途切れたりする
- 特に超短時間型や短時間型、またはお酒と一緒に睡眠薬を服用してしまった場合にみられる
早朝覚醒
- 朝までに効果が途切れると現れる可能性がある
- 作用時間が短い超短時間型・短時間型の睡眠薬を服用した場合に起こりやすい
反跳性(はんちょうせい)不眠、退薬症候
- 継続して睡眠薬を服用していた場合、突然中止した反動から不眠になること
- 超短時間型・短時間型の睡眠薬で起こりやすい
筋弛緩作用
- 高齢者に起こりやすい副作用
- 服用から入眠までの間に体に力が入りにくくなるため、転倒することがある
- 特に中時間型・長時間型の睡眠薬に起こりやすい
奇異反応
- 攻撃的になり、興奮しやすくなってしまう
- 特に超短時間型の睡眠薬を、お酒と一緒に服用した場合に起こる
まとめ:睡眠薬は、作用時間によって使い分けられます
- 睡眠薬は向精神薬の一種。睡眠障害を改善・軽減するために使われる
- 効果の持続時間により超短時間型・短時間型・中時間型・長時間型の4つに大別され、患者の不眠症状・程度によって使い分けられる
- 睡眠障害の改善に効果がある反面、用法・用量を無視した飲み方をすると重大な副作用を生じるリスクもある
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
睡眠薬は耐性が生じやすく、使うと量が徐々に増えていくため、服用は最終手段として残しておきたいところです。したがって、最初から薬に頼ってしまうのではなく、睡眠環境を整える(部屋を完全に暗くする、寝る前にスマホを見ない、など)など、生活習慣を見直すことを提案するのも大切です。
それでも改善しない場合、まずはラメルテオンのような体内時計を整える薬剤や、超短時間型、短時間型の睡眠薬から使用するのが一般的です。中時間・長時間作用型のベンゾジアゼピンは、睡眠薬として使うと翌日に作用が持ち越されて強い眠気が残ってしまうため、睡眠薬というよりもパニック障害の薬として使われることが多いです。