喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、呼吸器関連の症状を緩和するのに使われるのが吸入薬です。この記事では、吸入薬の種類とともに、使用上の注意点を紹介します。
吸入薬とは
- 吸入薬は、霧状に薬が噴出するタイプの治療薬。口から吸い込むことで、気管支や肺に作用させることができる
- 少量(経口薬の 1/20~1/10程度)で十分な効果を発揮する
- 肺・気道に直接作用するので、全身に及ぶ副作用が起こりにくい
- 使用する薬によってデバイスが異なる
吸入薬の種類
- 吸入ステロイド薬(ICS)
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- 喘息の第一治療薬
- 気道の炎症や気道過敏性を抑えて気道が狭くなるのを改善し、喘息発作を予防する
- 長時間作用性β2刺激薬(LABA)
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- 喘息発作を予防する目的で定期的に使用される
- 気管支平滑筋を弛緩させ、気道を広げる作用がある
- 短時間作用性β2刺激薬(SABA)
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- 喘息の発作時に使用する
- LABAよりも速やかに効果が現れる
- 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
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- COPDの第一治療薬
- 副交感神経の遮断作用により気管支の収縮を抑制する
- 気道を広げて呼吸を楽にする
デバイスの種類
- ドライパウダー吸入器
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- 粉末状の吸入薬に使用する
- エアゾール吸入器
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- 1回分の吸入薬がガスエアゾールとして噴霧される
- ソフトミスト吸入器
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- 噴霧ボタンを押すと、1回分の吸入薬がエアゾールとして噴霧される
吸入器の中には、高齢者でも吸入しやすいよう補助器具がついたものもあります。
吸入薬を使うときの注意点は?
吸入ステロイド薬
- 確実に効果を発揮するためには、継続して使用することが大事
- 特に、不規則な使い方をすると症状の悪化や発作につながる恐れがある
- 口腔内の感染症予防のため、吸入後は必ずうがいをする
長時間作用型β2刺激薬
- 吸入ステロイド薬と同じく、継続使用が必須
- 使用後に必ずうがいをする
短時間作用型β2刺激薬
- 喘鳴、咳が止まらないなど、発作の初期症状が出たときだけ使用する
- 1回吸入しても呼吸が苦しい場合は、2分以上(できれば5分以上)あけて2回目の吸入を行う
- もし、2回吸入しても症状が治まらないときは、すみやかに医療機関を受診してもらう
- 使用後に必ずうがいをする
まとめ:疾患によって吸入薬の種類が変わります
- 吸入薬はおもに4種類あり、それぞれ効能・効果が異なるため、疾患によって使い分ける
- 吸入薬は使用するタイミングで薬の効き目が変わるため、必ず医師・薬剤師の指示に従って使用してもらう
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
吸入薬は気管支喘息とCOPD治療の要であり、さまざまな薬剤があります。吸入器デバイスも多岐にわたっており、吸入しやすいよう、さまざまな工夫がされています。ただ、最も重要なのは正しい吸入手技です。医師も指導しますが、薬局などでも指導があると良いと思います。
ドライパウダーの吸入では、以下の2点が大切です。
吸う力が弱いとしっかり吸い込めないので、ドライパウダーはある程度吸う力が強い患者さんにだけ処方したほうがよいでしょう。一方、エアゾールタイプはゆっくり噴霧されるので、ゆっくり深呼吸するように吸い込んでもらうようにしましょう。
このように、適切な手技はデバイスによっても異なり、治療効果を大きく左右します。良い薬剤が登場しても正しく吸入できなければ十分な効果を得られませんので、ぜひ繰り返し指導していただければと思います。