ここ最近、「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ」といった言葉を目にする機会が増えています。この記事では、それぞれの意味や違いを解説します。
フレイルとは
- 2014年に、日本老年医学会が2014年に提唱した言葉
- 「加齢に伴い身体の予備能力(運動機能や筋力、認知機能)が低下し、健康障害を起こしやすくなっているが、適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」を指す
- 健康な状態から要介護に移行する途中の段階とも言われる
- 「Frailty(フレイルティ。「虚弱」「老衰」といった意味を持つ)」を由来とする言葉だが、「正しく介入すれば戻る」ことを強調するために「フレイル」となった
フレイルの基準
- 体重減少(6カ月で2~3kg以上)
- 疲れやすい
- 歩行速度の低下(1.0m/秒未満)
- 握力の低下(男性:26kg未満、女性:18kg未満)
- 身体活動の低下(軽い運動あるいは定期的な運動をしていない)
3項目以上に該当する場合は「フレイル」に、1~2項目に該当する場合は「プレフレイル(フレイルの前段階)」に該当します。フレイルになると、身体的な症状だけでなく、精神的な症状(認知機能や判断力の低下、うつ状態など)が現れることもあります。
サルコペニアとは
- ギリシャ語で「筋肉」を意味するサルコ(sarx)「喪失」を意味するペニア(penia)を組み合わせた言葉
- 加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態
- QOLの低下や転倒、骨折、寝たきりなどのさまざまなリスクが生じる
フレイルとの違い
- サルコペニアもフレイルも、加齢に伴う機能低下を意味する言葉という点は一致
- フレイルは筋力や運動能力、認知機能の低下、日常生活の活動減少、疲労感、低栄養、体重減少など、幅広い概念を表すのに対し、サルコペニアは筋肉量の減少が中心となる点に違いがある
サルコペニアとフレイルは別の概念ですが、サルコペニアはフレイルを招く要因のひとつと考えられています。フレイルは、筋力の低下→活力の低下や疲労感→身体機能や活動量の低下→食欲や食事摂取量の減少→低栄養→筋力の低下…と、悪循環をたどってしまうのが特徴ですが、そのサイクルに入ってしまう原因のひとつに、筋力の低下(サルコペニア)が関わっているためです。
ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは
- 骨や関節、神経などの運動器の衰えによって、立つ・歩くといった移動動作が困難になり、介護が必要な状態、または介護を必要とする可能性が高い状態
- 足腰が弱くなって寝たきりや要介護状態になりやすい状態でもある
- 骨の障害(骨折や骨粗しょう症など)、関節や椎間板の障害(変形性脊椎症や変形性関節症など)、筋肉や神経の障害(サルコペニアや麻痺など)などが起こる
ロコモはサルコペニアを含む状態で、かつ、フレイルの一部にも含まれます。
まとめ:フレイル、サルコペニア、ロコモは別の概念ですが、相互に関連しています
- フレイル、サルコペニア、ロコモは別の意味ではあるが、相互に関連し合っている
- 将来に備えて、予防策も含めて早めに対策を立てることが大切
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
フレイル、サルコペニア、ロコモなどは近年その重要性注目されつつありますが、診断が難しいことがあります。たとえば、脂質異常症などは血液検査をすれば確実にキャッチできますが、フレイルはフレイルの可能性に気づいて握力などの検査をしない限り見落としやすいのです。
見落としたままになってしまうと、将来の骨折などにつながって、QOLの著しい低下を招きます。それを防ぐためには、フレイル、サルコペニア、ロコモという疾患があることを認識するとともに、店舗を訪れる高齢者にその兆候がみられないかを気に掛けることが大切だと思います。