「夜、きちんと寝ているはずなのに日中に我慢できないくらい眠い」とき、不眠症を疑う方が多いのですが、「うつ」が原因になっていることもあります。この記事では、耐えがたい眠気とうつの関係について、原因や症状の特徴などをご紹介します。
寝たはずなのに眠い要因は
- 以下のような場合、本人が気づいていないようなストレスや不安などが原因で不眠状態になっている可能性がある
その1:一時的な不眠
- 徹夜や過度な飲酒、夜更かしなどで、翌日・翌々日に一時的な睡眠不足や疲労状態に陥る
その2:慢性的な不眠
- 不規則な睡眠や夜更かし、就寝前の飲酒など、一時的な不眠状態が長期化する
その3:不眠症
- 規則正しい生活を送っているのに布団に入ってから30分以上眠れない、また睡眠中に何度も起きてしまう
その4:過眠症
- 夜間きちんと眠れている、熟睡感があると思っているのに日中も眠い
- 過眠症はストレスや不安など環境的要因のほか、遺伝的な要因でも発症する病気のひとつ
眠気が「うつ」のサインになっていることも…?
- うつを発症する人の大半が、入眠障害や中途覚醒・早朝覚醒などの睡眠障害、そして日中の強い眠気の症状を訴えている
- 不眠を訴えていた人がうつを発症することもある
- うつの初期症状として、日中の眠気があらわれるケースもある
従来型のうつ病、大うつ病の場合
- 入眠障害(入眠前に極端にネガティブなことを考えてしまって眠れない)、中途覚醒・早期覚醒(夜中や早朝に起きてしまう)の症状がみられる
- 早く寝ようとしても寝付けず、熟睡もできていないため、特に朝方に調子が悪く、日中も慢性的に眠い状態が続く
新型うつ病の場合
- 入眠は早い反面、眠りが浅くて過眠になりやすい
- 浅い眠りが長時間続いていることが多い
- 睡眠時間は長くても熟睡できていないため、慢性的に眠い状態が続く
- 不十分な睡眠が集中力の欠如などを招き、日中の仕事に支障をきたすこともある
眠気・不眠以外の代表的なうつ病の症状は?
- 眠気や不眠の症状に加えて以下の症状が複数当てはまる場合、うつ病を発症している可能性が高いと考えられる
症状
- やるべきことはあるのに、やる気が出ない
- 理由はわからないが、絶望的な気分になる
- 好きなもの、ことに急に関心がなくなり、喜びや楽しみを感じなくなった
- 急激な食欲の増進、または減退があった
- ここ1カ月以内に5kg以上の体重の増減があった
- 理由はわからないが強い焦燥感を感じ、いつもイライラする
- 自責の念が強まり、周囲に迷惑をかけていると強く感じてしまう
- 思考力や集中力が低下し、注意力が散漫になってミスが増えた
- 自責の念がどんどん高まり「消えたい」「死にたい」などと考えるようになった
まとめ:眠気に加えて気分の落ち込みなどがあれば、「うつ」の可能性もあります
- 眠気や不眠の原因は、本人の生活習慣によるものもあるが、ストレスや不安の蓄積による「うつ」が原因のこともある
- 「うつ」による不眠の特徴として、夜よく眠れていない、夜中や早朝に目が覚めてしまう、寝付けないといった症状のほか、気分の落ち込みなどがみられる
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
「うつ」はいわゆる「抑うつ症状」としてだけでなく、単なる身体の不調(眠れない、なんとなくだるい、風邪っぽいなど)として発症することがあります。なんとなく気になったら、「最近うつっぽくなることありますか」などと尋ねてみることで、うつの患者さんを救うことができるかもしれません。
うつによる不眠は単なる睡眠導入剤では改善せず、抗うつ剤などの薬剤を適切に用いることでゆっくりと改善します。不眠のタイプには入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などがありますが、一般に早朝覚醒が特徴的と言われます。しかし、それ以外の不眠でもうつが隠れていることはありますから、睡眠薬を処方されている患者さんで気になる症状があれば、抑うつ感について尋ねてみてもよいでしょう。