インフルエンザが流行する時期は風邪も流行しているため、熱が出てもインフルエンザなのか風邪なのかがわからず、対処が遅れてしまうこともあります。この記事では、インフルエンザと風邪の症状の違いとともに、インフルエンザが疑われる初期症状や検査を受けるタイミングを解説します。
「インフルエンザ」と「風邪」の違い
インフルエンザ
- インフルエンザウイルスを原因とする呼吸器感染症
- 発症は特に12月~翌年の3月に集中する
- 潜伏期間は1~4日ほど
- 突然の高熱と激しい全身症状が特徴
- 全身症状は5日間ほど続く
風邪
- さまざまなウイルスが粘膜を通して体内に侵入し、炎症などを起こして発症する
- 発症は1年中みられる
- 症状は比較的軽いものがほとんどで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、たん、発熱などがある
インフルエンザの初期症状の特徴
- 発熱、鼻水、咳、頭痛、のどの痛みといった風邪に似た症状に加え、突然の悪寒や強い倦怠感があらわれる
- 38℃以上の急な高熱、頭痛、関節痛、全身の筋肉痛もみられる
呼吸器症状は比較的軽く、のどのいがらっぽい痛みや乾いた咳がみられます。ただ、その後に痰がからむような咳になってしまうと、呼吸困難に陥る恐れがあるため注意が必要です。
インフルエンザの検査を受けるタイミングは?
- インフルエンザの検査は、迅速検査キット(15分程度の検査でA型かB型かも含めて結果が判明する)で行われる
- 発症してから12時間~48時間に検査を受ければより正確な結果が得られる
迅速診断キットで正確な判定を得るには、少なくとも発症から12時間以上経過している必要があります。これは、発熱直後はウイルスの数が少なく、検査で陰性になる恐れがあるためです。
一方、抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に服用しないとその効果を十分に発揮できません。したがって、もし抗インフルエンザ薬を内服したい場合は、発症から12時間以上経った後、48時間以内に病院へ行くのが望ましい、ということになります。
なお、抗インフルエンザ薬による治療を受けても、症状が軽快する期間が1日短くなるぐらいの効果にとどまります。このため、妊娠中の方や高齢者を除き、安静にして症状が落ち着くのを待つのも一案です。
治療中の過ごし方
- 治療を始めてから2~3日でだいたいの症状は治まる
- ただし、体内にはまだウイルスが残っているため、熱が下がっても最低2日間は外出を控える
- 合併症を引き起こすと肺炎になる恐れがあるため、咳の悪化、呼吸するのがつらい、2週間経っても熱が下がらないといった症状がみられる場合は医療機関を受診する
特に小児の場合、下痢や腹痛、嘔吐などの消化器症状が出ることがあります。また、急性中耳炎、熱性けいれん、まれに脳症を起こすこともあるため注意が必要です。
まとめ:インフルエンザが疑われるときは、適切なタイミングで病院を受診しましょう
- インフルエンザでは風邪と似た症状があらわれるが、インフルエンザ特有の初期症状として、突然の悪寒、強い倦怠感、38℃以上の急な高熱、頭痛、関節痛、全身の筋肉痛などがみられる
- インフルエンザが疑われる発熱がみられ、かつ、治療薬の内服を希望する場合は、疑わしい症状が出てから12時間以上、48時間以内に医療機関を受診する
- 抗インフルエンザ薬による治療を受けても、症状が軽快する期間が1日短くなる程度の効果にとどまるため、症状が落ち着くまで自宅で安静にしていてもよい
- ただし、妊娠中の方や高齢者は重症化しやすいため、必ず医療機関を受診する
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
インフルエンザといえども、ただの風邪とそう変わりはないので、治療はあくまで安静、水分補給、対症療法になります。基本的に、タミフル®︎やゾフルーザ®︎などの治療薬は回復にかかる時間が少し短くなるだけ、と覚えておくとよいでしょう。だだし、妊娠中の方と高齢者は別です。これらの方々は重症化を防ぐため、治療薬の使用が必要です。
インフルエンザに特徴的な症状は急激な高熱、関節痛や筋肉痛などの全身症状です。インフルエンザが周りで流行っていて、これらの症状に加えて風邪の一般的な症状がみられたのであれば、検査をしなくてもインフルエンザになったと考えてよいと思います。インフルエンザの検査は早期に行っても意味がないため、あまりに早く検査を受けても正しい結果が出るとは限りません。「出来るだけ早期に受診を」という呼びかけを耳にしますが、インフルエンザの場合は当てはまりませんので注意しましょう。