複数の医療機関に通院している患者さんの場合、まず気になるのが薬の相互作用かもしれません。薬の相互作用は薬同士だけでなく、普段の食事でも起こることがあります。この記事では、薬の相互作用について解説します。
薬の相互作用とは
- 2種類以上の薬を併用した際、1種類の薬だけではあらわれない作用が出たり、薬の効き目が強くなる(もしくは弱くなる)といった変化が起こること
- 薬の相互作用の4つのパターン
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- 薬の効果が正反対のため作用が打ち消されてしまう
- 良く似た作用がある薬のため作用が強まってしまう
- 服用した薬の成分が体から排出されるのが遅れ、効果が持続しすぎたり、副作用が強く出すぎたりする
- 体からの排出が早くなって効き目が短くなってしまう
同時に服用している薬の種類が多ければ多いほど、相互作用も起こりやすくなります。複数の医療機関に通院している様子がみられたら、現在服用中の薬を必ず聞き取りましょう。
相互作用を引き起こす食べ物は?
- 相互作用は、食べ物との組み合わせでも起こることがある
グレープフルーツ
- 果肉に薬物の排出を阻害する成分が含まれている
- 摂取すると血中濃度が高くなり、薬の効きすぎによる血圧低下、頭痛、めまいなどを引き起こす恐れがある
- 特に、カルシウム拮抗薬、高脂血症治療薬、催眠鎮静薬、精神神経薬を服用している場合は要注意
納豆
- ビタミンKを大量に含んでいるため、服用中に食べると抗血栓薬の抗凝血作用、血栓形成予防作用を弱めてしまう
- ワーファリンなど、抗血栓薬を服用している場合は注意が必要
パセリなどの緑黄色野菜
- パセリなどの緑黄色野菜の中には、ビタミンKを多く含むものがある
- 服用中に食べると、ワーファリンの抗凝血作用、血栓形成予防作用を弱めてしまう
- ワーファリンなどの抗血栓薬を服用している場合は注意が必要
牛乳
- ニューキノロン系、テトラサイクリン系、セフェム系抗生物質の場合、カルシウムと薬の成分が結合して、薬の吸収や作用を低下させる
- 消化性潰瘍薬や骨粗鬆症薬を服用中の場合、高カルシウム血症などの副作用がみられる
カフェイン
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の場合、中枢神経刺激作用(神経過敏、いらいら、不眠)などがみられる
- ベンゾジアゼピン系薬の場合、カフェインが薬の作用を弱めてしまう
- 強心薬、気管支拡張薬の場合、中枢神経刺激作用が強く現れる
チーズ
- チーズにはチラミンが豊富に含まれている
- 消化性潰瘍治療薬、抗結核薬、三環系抗うつ薬を服用している場合、チラミン中毒(顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇など)を引き起こす恐れがある
相互作用の予防法は?
- 医師の指示に沿った服薬指導を行う
- お薬手帳を持参してもらい、処方箋をチェックする
- 食べ物との相互作用の有無も確認する
まとめ:食べ物で薬の相互作用が起こることも忘れずに伝えましょう
- 薬の相互作用は、複数の薬を服用したり、食べ物との組み合わせで起こる
- 複数の医療機関から薬を処方されている場合、処方前に必ずお薬手帳などで相互作用を起こす恐れがないかを確認する
- 相互作用を起こしやすい薬が処方されている場合は、必ず避けるべき食べ物を伝える
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
食事に気を付けることは、患者さんの頭から抜けてしまいやすいポイントです。特に注意が必要なのがワーファリンを内服されている方です。このような方には納豆と緑黄色野菜の摂取に注意するよう、繰り返し説明が必要です。
なかには青汁を飲みすぎて、ワーファリンの効果が相殺されてしまった、というケースもあります。薬剤の飲み合わせには注意する方も、食べ合わせは忘れやすいため、繰り返しの説明を心がけましょう。