抗生物質と似た言葉に「抗菌薬」があります。この記事では、抗生物質と抗菌薬の違いとともに、抗生物質の概要や副作用などをご紹介します。
抗生物質とは
- 抗生物質とは、細菌などの微生物の生命と拮抗する(殺す)物質のこと
- 現在は50種類ほどの抗生物質が使われており、β-ラクタム系、テトラサイクリン系などに分類されている
- 細菌を殺す効果はあるが、ウイルスを殺す効果はない(ウイルスに効果があるのは抗ウイルス薬)
抗生物質と抗菌薬との違い
抗菌薬
- 細菌を抑制したり、殺したりする薬
抗生物質
- 抗菌薬のうち、生き物(細菌や真菌など)から作られる薬
合成抗菌薬
- 抗菌薬のうち、科学的に合成されて作られる薬
このようにまずは抗菌薬があり、この中に抗生物質と合成抗菌薬があります。厳密にはこのような違いがありますが、日常生活の中でこれらの違いを区別しなくても問題ありません。
抗生物質の服用で起こりうる主な副作用
- 抗生物質の主な副作用として胃腸症状(胃のムカつき、吐き気、下痢、便秘、腹痛、消化不良など)がある
- 抗生物質の成分によって胃粘膜が傷ついたり、胃酸の働きを強めたりするため。特に空腹時は副作用が出やすい
- 皮膚のかゆみ、湿疹、じんま疹などもよくみられる
胃のむかつき、胃もたれ、吐き気などがよくみられる副作用です。重症の場合はすぐに医師へ相談すべきですが、軽度の場合は、「食後に抗生物質を飲む」「コーヒーやお茶の代わりに牛乳を飲む」で対処できます。
下痢や消化不良の場合、抗生物質によって腸内環境が崩れている可能性があります。「消化の負担が少ない食事にする」「ヨーグルトなどの乳酸菌飲料を飲む」などで、できる限り腸内を良い状態に保つ必要があります。
また、皮膚のかゆみなどは抗生物質の服用によって肌が乾燥しやすくなるために起こります。爪などで刺激するとかゆみを強めてしまうので、かゆくても我慢しましょう。
まとめ:抗生物質と抗菌薬の実質的な違いはほとんどありません
- 抗生物質と抗菌薬はほぼ同じものだが、厳密には天然の細菌・真菌から作られた「抗生物質」と人工合成された「合成抗菌薬」という違いがある
- 副作用として、胃腸や皮膚に不調が現れることがある
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
抗生物質と抗菌薬の違いは実質あまりありませんので、さほど気にしなくてよいでしょう。
抗生物質の最も重大な副作用はアレルギーです。アレルギー反応の重症型、アナフィラキシーでは皮膚症状、消化器症状、呼吸器症状が出現するので、特にこれらの症状についてきちんと説明しておく必要があります。また、薬剤アレルギーがあると患者さんに言われた場合は、どんな症状かを確認しておきましょう。
そして、抗生物質の処方でもう一つ大切なことは、処方された期間きちんと服用することです。症状が落ち着いたからといって、途中でやめてしまうとその後ぶり返す恐れがあります。最悪の場合、もともとの感染症がぶり返して熱が出ているのか、それとも他の原因なのかと判断を迷っているうちに重症化してしまうこともあります。
副作用の下痢などが出た場合、内服をやめてしまうことも多いのですが、その場合は必ず処方した医師に連絡して指示に従うよう、一言付け加えておくと安心です。