グリコペプチド系抗生物質は、主に健康な人の皮膚などに存在する黄色ブドウ球菌の一種である「MRSA」の感染症などに使われます。この記事では、グリコペプチド系抗生物質の効果や副作用などをご紹介します。
グリコペプチド系抗生物質の特徴は?
- 細菌の細胞壁の合成を阻害して殺菌作用を表す
- グリコペプチド系抗生物質であるバンコマイシン®︎やテイコプラニン®︎は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)といった感染症治療に使われる
- 黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌などに高い抗菌作用をもつ
ただし、VREは耐性遺伝子vanAを持ち、バンコマイシン®︎とテイコプラニン®︎に高い耐性を示すものがあるため、使用については特に注意が必要です。また、バンコマイシン®︎にのみ耐性を示す耐性遺伝子vanBを持つものもあるため、薬の使用にあたっては感受性の確認が大切です。
なお、バンコマイシン散は内服しても血液中に成分が入らないため、細菌が血液中に存在する菌血症には使用しません。
主なグリコペプチド系抗生物質の治療薬は?
バンコマイシン®︎
- 主に肺炎や髄膜炎、心内膜炎などのMRSA感染症に使用される
- 細胞膜の透過性を変化させることで細胞内の成分を細胞膜の外に出し、細菌を破壊する
- 点滴静注する場合、急速に投与すると体の上部の紅潮、かゆみ、血圧低下などがみられることがあるため、60分以上かけて行われる
タゴシット®︎
- 主にMRSA感染症に使用される
- バンコマイシン®︎と比較して副作用が少ないことが特徴
- バンコマイシン®︎と同じ理由から、点滴静注する場合は30分以上かけて行われる
グリコペプチド系抗生物質の副作用は?
- 主な副作用としては、発疹、発熱などがある
- まれにめまいや耳鳴り、尿量減少、一時的な尿量過多、むくみなどがみられることもある
まとめ:グリコペプチド系抗生物質には、細胞壁合成を阻害する働きがあります
- グリコペプチド系の抗生物質は、細胞壁を破壊することで抗菌作用を表す
- 副作用として、耳鳴りや尿量減少、むくみなどの副作用がみられる
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
グリコペプチド系の薬剤のうち、使用頻度が高いのはバンコマイシン®︎です。院内では頻繁にMRSA感染症に対して使用されます(内服薬は血中に移行しないため、特殊なケースを除いて基本的には入院患者さんにしか使わないはずです)。MRSA感染症に対する第一選択薬で、使用頻度の高い薬剤ですので、比較的まれな副作用についても知っておく必要があります。
また、バンコマイシン®︎とテイコプラニン®︎は、適切な濃度を保つために頻繁に血中濃度(トラフ濃度)の測定が必要ですので、それについてもよく知っておく必要があります。
頻度の高い副作用として、皮疹と腎障害があります。皮疹は別名Redman症候群とも言われ、速やかに点滴投与することで上半身に赤い皮疹が現れます。滴下速度をゆっくりにすると起こりづらいので注意が必要です。また、腎障害を起こす可能性もあります。もともと腎機能障害をお持ちの患者さんの場合、投与量もタイトレーションする必要があります。
使用頻度が高く、かつ使用法に注意が必要なバンコマイシン®︎のような薬剤は最も注意を払うべき薬剤です。薬剤師さんによるご指摘が、とても役立つ薬剤と思います。