コレステロール値を下げたいとき、生活習慣の改善に取り組むのが基本です。ただ、場合によってはコレステロール値を下げる薬を服用することもあります。この記事では、コレステロール値を下げる薬の種類とともに、起こりうる副作用について解説します。
脂質異常症とは
- 脂質異常症は2007年から用いられるようになった名称。高コレステロール血症、高脂血症に分類されていたものが統一された
- 悪玉コレステロール(LDL)、中性脂肪(トリグリセライド)、善玉コレステロール(HDL)のいずれか、または複数に異常がみられる状態。動脈硬化を進行させ、心疾患や脳血管障害を引き起こすリスクとなる
- 食生活や運動、睡眠といった生活全般の見直しを行うことが治療の基本だが、並行してコレステロールの値を下げる薬を使うこともある
コレステロールを下げる薬の種類
スタチン系製剤
- 肝臓のコレステロール合成を抑える薬
- 副作用として、横紋筋融解症を発症させることがある
抗酸化薬
- コレステロールを減らすとともに、動脈硬化の進行も抑える
コレステロール吸収阻害薬
- 腸でのコレステロールの吸収を抑え、血中コレステロール値を低下させる
- 副作用として、便秘や腹部の膨満感が起こることがある
フィブラート系製剤
- 中性脂肪を低下させる
- スタチン系製剤と同じく、副作用として横紋筋融解症を発症させることがある
EPA製剤
- EPA(不飽和脂肪酸)は体内でエネルギーをつくる際に大切な物質
- 悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減少させる働きがある
ニコチン酸誘導体
- 水溶性ビタミンB群の一種。糖や脂質、タンパク質の代謝を助ける
- タバコに含まれるニコチンとは異なる
横紋筋融解症とは
- 横紋筋の細胞に含まれる物質が大量に血液中に溶け出して、全身状態を悪化させる病気
- 発症すると、初期は体の痛み(特に、筋肉が多い太もも)が痛くなることが多い
- その後、手足の力が入らない、血尿が出るといった症状がみられる
横紋筋が溶けて血中に成分が流れ出すと、腎臓の尿細管が詰まって急性腎不全が起こります。その結果、尿が出なくなってむくみが生じたり、発熱や腹痛、呼吸困難といった全身症状につながります。また、カリウムやリンなどが血液中に過剰に流れ出すことで、心臓の拍動に異常が生じることもあります。重症化すると命に関わることがある病気です。
まとめ:コレステロール値を下げる薬には、横紋筋融解症の発症リスクがあります
- 脂質異常症でコレステロール値が高いとき、生活習慣の改善に加えてコレステロール値を下げる薬を服用することがある
- コレステロール値を下げる薬の副作用として、便秘や腹部膨満感のほかに横紋筋融解症がある
- 横紋筋融解症の初期症状は体の痛みだが、進行すると手足に力が入らなくなったり、血尿が出たりする
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
脂質異常症に対するスタチン系の薬剤は、心血管系疾患の予防にはとても大切な薬剤ですが、横紋筋融解症という重大な副作用を起こすリスクがあります。横紋筋融解症が発症する頻度自体はとても低いものの、スタチンを内服している母集団が非常に多いため、実際には横紋筋融解症の発症数自体は無視できません。
横紋筋融解症は、血尿や全身の筋肉痛といったわかりやすい症状が出れば診断しやすいのですが、なかにはなんとなく元気がない、力が入りづらいなどの軽微な症状を訴える方も多く、気づかないうちに重症化する可能性があります。横紋筋融解症の進展を未然に防ぐためには、薬局でこうした軽微な症状がないかどうかにも注意して問診していただくことが大切と思われます。