造影剤とは、CT検査やMRI検査など、画像診断時に体内を写し出すために使われる薬です。健康診断のときに飲むバリウムも、造影剤の一種です。この記事では、造影剤が使われる検査とともに、起こりうるアレルギー反応について解説します。
造影剤が使われる検査は?
- 画像診断検査で体内の状態をよりわかりやすくするために使う薬剤
- CT検査やMRI検査では、静脈に注射して全身に分布させる
- 血管造影検査では、カテーテルで直接血管(基本的に動脈だが、一部静脈の場合もある)に注入する
- バリウム検査、消化管や胆道系の造影検査などの場合、口・内視鏡・肛門などから目的の臓器に直接注入する
造影剤の種類
硫酸バリウム
- 食道・胃・腸などの検査で広く使われる
- 消化管に投与するため、比較的安全性が高い
- 誤飲しやすい患者さんの場合、肺炎を引き起こす恐れがある
- 消化管穿孔の疑いがある患者さんの場合、腹膜炎を引き起こすことがある
- 結腸閉塞の疑いがある患者さんの場合、経口投与できないことがある
ヨード造影剤
- CT検査や血管造影検査、X線TV検査などでよく使われる
- 副作用の起こる割合は約3%。そのうち、重篤なものは約0.004~0.04%
- 軽い副作用として、吐き気・嘔吐・かゆみ・じんましんなどがみられる
- 重い副作用として、呼吸困難・意識障害・血圧低下などがみられる
MRI用造影剤
- ガドリニウム造影剤
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- ヨード造影剤と同じ副作用が起こり得るが、発生頻度は低い
- SPIO
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- 肝臓の検査によく使われ、比較的副作用は少ない
- 点滴静注投与中に腰痛を生じることがあるが、注入を中止すればすぐ痛みは引く
- MRI経口消化管造影剤
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- 腸管内の画像を見やすくするために用いる
- 胆道系の検査で用いることが多い
- 鉄を含むため、鉄分アレルギーの方には利用できない
造影剤でみられるアレルギー症状
- 軽症:かゆみ、じんましんなど
- 重症:気道の閉塞(呼吸困難)、ショックなど
30年ほど前の造影剤はアレルギーなどの副作用が出やすかったのですが、年々改良が続けられ、現在主に使われているヨード造影剤は軽度な副作用で約3%、重篤な副作用で約0.004~0.04%と、頻度が非常に低くなっています。
アレルギーに気を付けたほうがよい方
- アレルギー体質の方や喘息の方、過去に喘息だった方は、造影剤に対する重篤なアレルギーが起こりやすい
- 造影剤は腎臓から尿として排出されるため、腎機能が低下している方は腎機能低下を引き起こす恐れがある
まとめ:造影剤のアレルギー症状は軽いものがほとんどですが、持病があると重くなる恐れがあります
- 以前は造影剤によるアレルギー症状が出やすかったが、現在は改良され、アレルギーが出る確率はかなり下がっている
- ただし、もともとアレルギー体質の方は重篤な症状が出るリスクが高い
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
造影剤アレルギーが起こる確率は以前に比べて減ったと言われますが、造影剤の使用頻度がとても多いため、実は病院ではかなりの高頻度で造影剤アレルギーを経験しています。症状は軽い動悸や嘔気、軽い膨疹でおさまることもありますが、それに加えて呼吸困難や血圧低下、下痢などを認める場合はアナフィラキシーと判断して緊急の対応が必要です。
アレルギーの症状として、一般にはあまり認識されていませんが、動悸や腹痛、嘔気などの消化器症状もアレルギー症状なので注意していただくと良いと思います。また、体が熱くなるという症状はかなり多くの方が経験しますので、一言お伝えいただくと良いと思います。