子供がかかることが多い水ぼうそうですが、実は大人も水ぼうそうにかかることがあります。大人になってから発症すると重症化しやすいため、対症療法ではなく薬物療法を行う場合が多いです。この記事では、水ぼうそうの治療に使う薬や、発症した場合の過ごし方を解説します。
水ぼうそうとは
- ヘルペスウイルスの仲間である水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus=VZV)によって引き起こされる感染性疾患
- 発熱と全身の皮膚にかゆみのある発疹・水ぶくれができるのが特徴
- 主に小児(1~4歳)がかかりやすく、ほとんどの子供が9歳ごろまでに感染・発症すると言われる
- 小児が重症化することは少なく、一度感染・発症すると抗体ができるため再発もほとんどない
- ただし、大人になってから初めて感染・発症した場合は重症化しやすく、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こすリスクも高くなる
水ぼうそうの治療薬は?
- 小児の場合、免疫機能の獲得のために対症療法で済ませる場合が多い
- ただし、症状が重い場合や、成人が発症した場合は重症化や合併症のリスクがあるため、水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が使われる
- 抗ウイルス薬には、アシクロビルとパラシクロビルの2種類がある
アシクロビル
- ヘルペスウイルスに感染した細胞内で活性化し、ウイルスのDNA複製を阻害して増殖を防ぐ薬
- 水ぼうそうや帯状疱疹だけでなく、口唇・顔面ヘルペス、性器ヘルペス、カボジ水痘様発疹症などの治療にも使われる
- ヘルペスウイルスの増殖を抑える薬のため、発症初期に投与するのがより効果的
- 特に、水ぼうそうの場合は発症してから24時間以内に投与しないと効果を実感しにくい
- 飲み薬
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- ゾビラックス®︎錠
- ゾビラックス®︎顆粒など
- 注射薬
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- ゾビラックス®︎点滴静注用など
このほか、ジェネリック医薬品として内服用のゼリーやシロップ剤もあります。副作用は比較的少ないものの、ごくまれにアレルギー反応やむくみなどが生じることもあります。
パラシクロビル
- パラシクロビルは、体内でアシクロビルに変化するため、基本的な効能はアシクロビルと同じ
- 基本的にはアシクロビルを使うが、重症化のリスクがある方や免疫が低下している方の場合、パラシクロビルを優先的に使うことがある
- アシクロビルが効きにくい場合もパラシクロビルが使われる
- 飲み薬
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- バルトレックス®︎錠
- バルトレックス®︎顆粒など
- 注射薬
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- なし
アシクロビルと同じく、パラシクロビルもジェネリック医薬品が多数販売されています。副作用も基本的にはアシクロビルと同じですが、アシクロビルよりもやや腎機能に関する副作用の報告が多いため、腎機能が弱っている場合は注意が必要です。また、アシクロビルへの変化は肝臓で行われるため、肝不全の方には使えません。
カチリ(石灰酸亜鉛化リニメント)
- 水ぼうそうの発疹や水ぶくれの強いかゆみを抑える軟膏
水ぶくれは体が温まるとかゆみが増すため、入浴時は湯船に浸からずシャワーなどで済ませたり、水ぶくれの部分を冷やしたりするのがおすすめです。
まとめ:水ぼうそうの治療では抗ヘルペスウイルス薬を使います
- 水ぼうそうの治療には、基本的にはアシクロビルを使う
- アシクロビルはヘルペスウイルス全般に効く薬。ウイルスの増殖を抑える働きがあり、24時間以内の投与で効果を発揮する
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
この記事ある通り、基本的に子供が水ぼうそうにかかった場合、積極的な治療は行いません。ただし、大人になってからかかった場合や、免疫抑制状態にある子供がかかった場合には治療薬の内服が必要になります。その場合、アシクロビルの重篤な副作用としては腎機能障害と神経症状(せん妄や幻覚など)がありますので、処方時に一言添えるとよいでしょう。