医師から処方された薬を飲み続けても、依存症に陥ることはほぼありません。ただ、もともと依存性が強い薬を服用している場合、その期間が長引いたり、薬の量が増えたりすることで依存症になってしまうことがあります。この記事では、処方薬による依存症(処方薬依存症)について解説します。
処方薬依存症とは
- 処方薬依存症とは薬物依存症の一種
- 処方された量以上の薬をまとめて飲む、多種多様な薬を求めて医療機関をはしごする、違法に入手するといった行動をとる
- 発症すると服用しても効果を実感できず、服用量が増えたり、自分の意志で服用を中止できなくなったりする
- 重度の依存症になると、突然眠ったり、記憶を失ったりして、日常生活や仕事に支障をきたす
- 常用量依存も処方薬依存症に含まれる
どんな薬が処方薬依存症を招きやすい?
エチゾラム
- もともと依存性があることが知られている薬
- 2016年に「麻薬及び向精神薬取締法」の第三種向精神薬に指定
- 個人輸入等を行うと法律で罰せられる
フルニトラゼパム、トリアゾラム
- 慢性または重度の不眠症の短期間の治療薬
ゾルピデム
- 不眠症治療薬
- 以前から習慣性が指摘されており、「麻薬及び向精神薬取締法」の第三種向精神薬に指定されている
バルビツレート系の薬
- 抗精神病薬のクロルプロマジン、抗てんかん薬のフェノバルビタール、抗ヒスタミン作用があるプロメタジンを合わせた配合薬
- 大量服用すると死に至る恐れがある
処方薬依存症を防ぐには?
- 違う病院、違う薬局で処方してもらっていないか注意する
- 依存に関係なく飲み続けなければならない薬もあるため、自己判断で薬の服用量を減らしたり、服用をやめたりしないよう伝える
- 服用量を変えたい場合は、必ず処方した医師に相談してもらう
まとめ:薬の内服方法は医師の指示をよく守りましょう
- 処方薬依存症の多くは、必要以上に薬を飲み続けることで発症する
- 医師から指示された期間、指示された量だけを服用するよう注意喚起する
- 自己判断で薬をやめてしまうこともリスクを伴うため、服用量を変更したいときは必ず医師に相談してもらう
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
「処方薬依存」は立派な薬物依存です。この記事で紹介されている薬剤で多いのはベンゾジアゼピン系の薬ですが、精神依存を越えて身体依存まで至ると、服用していない時期に重篤な睡眠障害や不安症状、動悸、頭痛、幻視などの離脱症状が出るようになります。
「この薬使わないと寝つきが悪いんだよね」くらいならまだよいのですが、「薬を使わないと全く眠れない」「なんだかドキドキして頭も痛い」などと言っている場合は完全に身体依存に達しているため、病院での受診が必須です。処方量がどんどん増えていたり、使わないと寝つきが悪い、くらいの段階で依存の可能性を念頭に置きながら応対するとよいと思います。