呼吸器系の感染症の原因となるRSウイルスは、特に乳幼児が感染しやすいと言われています。この記事では、RSウイルスの感染経路や感染した場合の症状、対処法について解説します。
RSウイルスとは
- のどや気管支などの、呼吸器系の感染症
- RSウイルスのRSは「Respiratory Syncytial(=呼吸器の合胞体)」の略。ウイルスが感染すると、呼吸器の細胞が腫れてひとつになることが名前の由来
- 感染力がとても強く、2歳児までの乳幼児はほぼ100%感染するとも言われる
RSウイルスの感染経路は?
- くしゃみや咳などの飛沫や、手指の接触などで感染する
- 鼻から侵入して感染することが多い
- 感染力が強く、ウイルスに感染した人の手では約30分、机などであれば6時間ほどは感染力が持続する
潜伏期間は2~8日、ウイルスが排泄されるまで7~21日間かかります。ウイルスを保持している期間が比較的長いため、感染が広がりやすいのが特徴です。
RSウイルス感染でみられる症状は?
- 主な症状は、鼻水、せき、発熱など、一般的な風邪の症状
- ウイルスが下気道に入り込むと、下気道炎や細気管支炎、肺炎に至って入院が必要になることもある
- 特に乳幼児は重症化しやすいため、高熱や苦しそうなせきが続くこともある
RSウイルス感染後の対処法は?
- RSウイルスに有効な抗ウイルス薬はまだ開発されていない
- このため、咳止めや解熱剤、痰を斬りやすくする薬などを服用する対症療法が中心となる
- ただし、新生児や乳幼児の場合は、感染症の重症化を予防するため、モノクロナール抗体製剤(シナジス®)を注射することがある
モノクロナール抗体製剤の対象となる新生児および乳児
- 在胎期間28週以下の早産で、月齢12カ月以下の新生児及び乳児
- 在胎期間29~35週の早産で、月齢6カ月以下の新生児及び乳児
- 過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた月齢24カ月以下の新生児、乳児及び幼児
- 月齢24カ月以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児
RSウイルス感染を予防するには?
- 家族全員の手洗い、風邪を引いた人や兄弟との接触は避ける
- 風邪を引いているほかの家族とは寝室を別にする
RSウイルスの感染予防は、1歳以下の乳児において特に重要です。大きな子供や大人がRSウイルスに感染しても、「風邪を引いたかな」程度の症状で済むこともありますが、0~1歳児が感染すると重症化する恐れがあります。また、RSウイルスは喘息を発症しやすいウイルスでもあります。
特に10月頃から2月頃は流行期ですので、人の出入りが多い場所は避けましょう。また、タバコの煙は、子供の気道を刺激し、咳の悪化を引き起こす可能性があります。
まとめ:RSウイルスは乳幼児に感染すると重症化しやすいので、予防に努めましょう
- RSウイルスは、のどや気管支といった呼吸器系の感染症を引き起こす
- 感染力がとても強く、2歳児までの乳幼児はほぼ100%感染する
- 乳幼児や小児の場合、悪化すると気道感染症を引き起こし、肺炎や際気管支炎などの重篤な病気につながる可能性もある
- 予防のために、風邪を引いた家族との接触を避ける、人混みを避ける、受動喫煙を避けることが大切
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
RSウイルスは乳幼児で非常に多い感染症です。重症化する場合は2~3日程度発熱や鼻水などが出た後、咳・喘鳴・呼吸困難が4~5日続く経過が一般的です。そうした経過をとった場合や、特にゼーゼーと苦しそうな場合は、必ず早めに病院へ連れて行ったほうがよいことを伝えましょう。