お酒に強いか、弱いかは遺伝によって決まりますが、お酒に強い・弱いという体質に関わっているのが「アセトアルデヒド」です。この記事では、アセトアルデヒドとはどんな物質かや、人によってお酒に強い・弱いが違う理由を紹介します。
アセトアルデヒドとは
- アセトアルデヒドは、自然界では植物の代謝過程でできる物質
- ヒトの体内ではアルコールを飲んだ際に生成される物質のひとつ。エタノールの酸化によって作られる
アセトアルデヒドは、肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)によって分解されることで作り出されます。その後、2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)と1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH1)によってさらに酢酸に分解されます。そして、筋肉や心臓その他の臓器に移動してさらに分解され、最終的に炭酸ガスと水になって無害化して排出されます。
こうした一連の代謝が滞りなく行われていれば、アセトアルデヒドは人体に自覚症状を及ぼすことはほとんどありません。しかし、大量の飲酒などによって分解が追いつかなくなると、体内に大量のアセトアルデヒドが残って二日酔いの症状を引き起こします。
アセトアルデヒドによってあらわれる症状
- 吐き気
- 呼吸や脈拍の増加
- 頭痛
- 食欲不振
- 喉の渇き
アセトアルデヒドの代謝能力は人によって違う?
- アセトアルデヒドの代謝能力は遺伝で決まる
- アセトアルデヒドの2つの分解酵素(ALDH1、ALDH2)のうち、主にアセトアルデヒドの分解酵素として働くのはALDH2
- ALDH2の活性が弱い(働きが悪い)、または欠けている場合、アセトアルデヒドが溜まりやすく、少しの飲酒でも体調が悪くなってしまう(お酒に弱い体質)となる
- ALDH2が完全に欠けている場合、お酒を全く受けつけない体質となる
日本人は、特にALDH2の欠損率が高いことがわかっています。ALDH2の欠損はアジア系モンゴロイドと呼ばれる人たちに特有の遺伝的性質で、ヨーロッパ系・アフリカ系の人種にはみられない特徴です。ALDH2が欠けている方に飲酒を勧めるのは非常に危険ですので、絶対にやめましょう。
アセトアルデヒドの代謝はチェックできる?
- お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる方は、生まれつきALDHが少なく、活性が低いタイプ
- 早い段階でアセトアルデヒドが血中に流れ出すため、血管が広がって顔が赤く見える
- 代謝能力は、アルコールパッチテストでチェックできる
- 市販のキットが販売されているが、消毒用アルコールとガーゼ付き絆創膏があれば、簡単にチェックできる
手順
- 薬剤のついていないガーゼつき絆創膏に、消毒用アルコールを2~3滴染み込ませる
- ①を上腕の内側に貼りつけ、7分間そのままにする
- 7分経ったらはがし、直後(5秒以内)にガーゼが当たっていた部分の肌の色を観察する
- はがしてから10分後に、もう一度肌の色を観察する
結果
- 変化なし:ALDHの活性が十分で、お酒が飲めるタイプ
- はがしてから10分後に赤くなった:ALDHの活性が弱い。お酒が全く飲めないわけではないが、飲むと頭痛や吐き気を引き起こす
- はがした直後に赤くなっていた:ALDHが欠けており、全くお酒を受けつけない
パッチテストでお酒が飲めない、弱い体質とわかったら、くれぐれも無理をしないようにしましょう。
まとめ:日本人はアセトアルデヒドの代謝活性が弱いです
- アセトアルデヒドは、アルコール(お酒)を分解したときにできる「中間代謝物質」のひとつで、二日酔いの原因物質と言われている
- ADHという酵素でアセトアルデヒドに分解後、さらにALDHという酵素によってさらに分解される
- ALDHが遺伝的に弱い、または欠けている場合、アルコール代謝能力が弱いので無理に飲まない
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)は両親から一つずつ受け継ぐため、子供のALDHの組み合わせとして①強い/強い、②強い/弱い、③弱い/弱いの3通りが考えられます。一般的には①強い/強いは上戸、③弱い/弱いはいわゆる下戸になります。
日本人は世界的にみるとALDHの活性が低く、アルデヒドの処理能力の低い方が多いです。下戸でアルコールを飲むとすぐ赤くなる方は、食道がんのリスクも高いと考えられています。アルコールの強さは飲んでいたら慣れるものではなく、ほぼ遺伝で決まっているので、無理をしないようにしましょう。