抗生物質にはさまざまな種類があり、その中でもアミノグリコシド系抗生物質は淋病などの細菌性の病気に効果を発揮します。今回はアミノグリコシド系抗生物質の特徴や殺菌方法、そして副作用をご紹介します。
アミノグリコシド系抗生物質とは
- アミノグリコシド系抗生物質は、細菌が繁殖するために欠かせないタンパク質の合成を阻害する
- 薬剤の種類によって、抗菌作用が及ぶ場所が異なるのも特徴のひとつ
細菌のタンパク質合成は、リボソームで行われます。リボソームは30Sと50Sに分類されますが、アミノグリコシド系抗生物質は30Sサブユニットに作用してタンパク質合成を阻害します。
アミノグリコシド系抗生物質の働き
- アミノグリコシド系抗生物質は、どの部位に作用させたいかによって使用する薬が変わる
- 結核の原因となる細菌に対してはストレプトマイシンなどを、淋菌感染症の原因菌にはスペクチノマイシンなどを使う
- 硫酸カナマイシンやカナマイシンには腸内でアンモニアを生成する細菌を殺菌する働きがあるため、肝障害における肝性脳症などにも用いられる。また、脳にアンモニアが移行するのを防止できるため、肝性脳症による高アンモニア血症も改善する
主なアミノグリコシド系抗生物質の治療薬は?
- 結核菌
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- ストレプトマイシン
- アミカシン
- カナマイシン
- 硫酸ストレプトマイシンなど
- 非結核性抗酸菌症
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- 硫酸ストレプトマイシン
- 結核菌以外にも抗菌作用があるもの
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- カナマイシン
- 淋病
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- スペクチノマイシン
- トロビシン
- 緑膿菌(尿路感染症や呼吸器感染症などの原因菌)や感染性心内膜炎
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- ゲンタシン
- MRSA(MRSA感染症の原因となる菌)
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- アルベカシン
- ハベカシン
硫酸カナマイシンやカナマイシンは、注射剤タイプは結核などに、内服薬タイプは赤痢菌や大腸菌による腸管感染症に使われます。
アミノグリコシド系抗生物質の副作用は?
- 過敏症状
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- 発熱や発疹、痒み、皮疹などが出ることがある
- 腎機能障害
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- 発症頻度は少ない
- ほぼ尿が出ない、尿量が少ない、むくみ、発疹、体がだるいといった症状がみられる
- 脳神経障害
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- 発症頻度は少ない
- 耳がつまった感じ、聞こえづらい、ふらつく、耳鳴りといった症状がみられる
まとめ:アミノグリコシド系抗生物質は結核や淋病などに効果を発揮します
- アミノグリコシド系抗生物質は、さまざまな細菌性の病気に使われる
- 副作用として、発熱や発疹、まれに腎機能障害や脳神経障害がみられる
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
臨床的にはアミノグリコシド系抗生物質を使う機会はあまり多くなく、耐性菌や特殊な細菌感染症など、それ以外に治療選択肢がないときに限られます。
注意すべきは腎障害と耳毒性です。腎障害に関して、注意が必要なのは併用薬です。NSAIDsや利尿薬など、腎機能を悪化させうる薬剤が併用されていることがとても多いです。また、処方薬であればチェックができますが、なかには薬局でロキソニン®︎を購入して服用している場合もありますので、そのようなことがないかを聞くことが大切だと思います。
また、耳毒性に関しては定期的に聴力検査をするほか、自覚症状としてめまい、耳鳴り、難聴などがないかを聞くことが大切です。聴力低下は高音域から起こることが多いとされているので、それらも含めて出現しうる症状を説明していただくのが良いと思います。