ダイエットを始めるとき、最初に思い浮かぶのが「炭水化物を抜く」かもしれません。しかし、炭水化物は体にとって重要なエネルギー源のひとつなので、完全に抜いてしまうのもリスクがあります。この記事では、炭水化物が太るといわれている理由とともに、太りにくい食べ方のコツをご紹介します。
「炭水化物を食べると太る」と言われる理由は?
- 炭水化物は、糖質と食物繊維の総称
- 糖質を摂るとインスリンが分泌され、エネルギー源に変わる
- エネルギーとして消費しきれなかったものが中性脂肪に変わるため、炭水化物を摂り過ぎると太ってしまう
炭水化物を食べなければ痩せる?
- 過剰な糖質制限をすると、低血糖や集中力の低下、肝機能の低下、疲れやすくなるといった不調が出る恐れがある
- 特に、脳は昼夜を問わず一定のスピードでエネルギーを消費しているため、炭水化物をまったく食べずにいると命に危険が及ぶことも
炭水化物は体や脳のエネルギー源となる栄養素です。このため、食べずにいると脳にエネルギーが行き渡らなくてぼーっとしたり、肝臓に蓄えられていた糖質が分解されて肝機能が低下したり、体内のたんぱく質が分解されて疲れやすくなったりします。
特に、脳は1日に120gものエネルギーを消費していると言われています。したがって、炭水化物を極端に制限すると危険な状態を招く恐れがあります。
1日に食べてもいい炭水化物の摂取量は?
- 1日あたりの炭水化物摂取量の目安は、男女とも1日に摂取するエネルギーの50~65%
- ご飯の場合、毎食腹8分目を心がける
具体例
- 1日の摂取エネルギーが2,000kcalの場合 → 1,000~1,300kcal相当
- 炭水化物1gが約4kcalのため、1日あたりの炭水化物摂取量の目安は250~325g
※ごはん茶碗1杯分の目安は約150g
炭水化物を食べても太らない方法は?
食べる順番に気をつける
- 最初に食物繊維(野菜、きのこなど)から食べ始め、タンパク質(肉、魚など)、炭水化物の順に食べる
- 汁物でお腹を膨らませるのも食べ過ぎ防止になる
よく噛む
- よく噛むと満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを予防できる
- 一口につき30回ぐらい噛むと、満腹感を得やすいだけでなく、消化・吸収も助けられる
満腹中枢は、食事を始めてから30分経たないと働きません。早食いの人が太りやすいのは、この満腹中枢が刺激される前にどんどんと食べ過ぎてしまうためです。
酢を摂る
- 酢には血糖値の上昇をゆるやかにする働きや、脂肪の蓄積を抑える効果がある
- ドレッシングに使ったり、飲みやすい酢を探すのもおすすめ
まとめ:食べる順番や量に気をつければ、炭水化物を食べても太りません
- 炭水化物は体にとって重要なエネルギー源のため、まったく食べずにいるのは危険
- 炭水化物を食べると太るのではなく、食べ方や摂取量が原因で太る
- まったく食べないのではなく、食べる順番や食べる量にひと工夫加える
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
世の中にはケトジェニックダイエットや糖質制限など、さまざまな糖質制限ダイエット法がありますが、ほとんどの方にとって、適量の炭水化物を摂取することは健康的な生活を送る上で欠かせません。
急激な糖質制限は体にとって大きなストレスとなり、長期的には甲状腺機能低下症などにつながることも示唆されています。また、過度な糖質制限によって死亡率が上昇すると示唆する論文もあります。
特定の食事制限法が合うかどうかは、それまでに送ってきた生活習慣など、個人差が大きいです。このため、糖質制限で体調がとても良くなる方もいますが、全体としては過度な糖質制限を長期間続けることには注意が必要と思われます。
以上から、適度に炭水化物を摂取した方が安全と考えられます。その場合、出来るだけインスリンの過度な分泌を抑えるために、食物繊維を先に摂取するといった工夫をすることも伝えてください。