時間栄養学における食生活のポイントは?

体重管理は健康維持の基本のひとつです。太りすぎにならないよう、食事や運動の見直しが推奨されますが、近年は「時間栄養学」のアプローチが注目されています。この記事では、時間栄養学の概要やポイントを紹介します。

時間栄養学とは?

  • 時間栄養学とは、時間薬理学、時間医学、時間治療学などの領域の研究を、栄養学の分野に応用したもの
  • 朝の光に加え、食事も体内時計を整える効果があることが明らかになったため、時間栄養学が生まれた
  • 食事の摂取時間が体に与える影響を考慮し、健康的な生活のために食事を「いつ食べるとよいか」を研究する

体内時計とは

  • 人間の体はサーカディアンリズム(概日リズム)という約24.5時間のリズムを持っている
  • サーカディアンリズムは体内時計によって作られている
  • 研究の結果、脳にある主時計のほか、全身に時計遺伝子が発現していることが判明
主時計
脳の視交叉上核(視神経が交叉している部位)に存在する
時計遺伝子
大脳皮質、海馬、心臓、肺、肝臓、腎臓、筋肉など全身の組織に発現

時計遺伝子はサーカディアンリズムを司るもので、20種類ほどが発見されています。時計遺伝子が正常に働くことで、体は調和を保っています。サーカディアンリズムは約24時間10分ですが、実際の1日の長さは24時間です。体のリズムと1日の長さは毎日10分ずつズレてしまうため、朝の光や食事でリセットすることが大切です。

時間栄養学のポイント①:食べる順序・速度

ベジタブルファースト
  • 食事はまず野菜から食べ、炭水化物(ごはん、パン、麺類など)は野菜のあとに食べる
  • サラダを食べるとき、油分(マヨネーズやドレッシングなど)と一緒に摂取すると、胃の中での滞在時間を長くさせるため、消化吸収がゆっくりになる
  • 酢も吸収をゆるやかにさせるため、食事に取り入れると肥満防止効果が期待できる
ゆっくり、よく噛んで食べる
  • よく噛んで食べると、血糖値の急激な上昇やインスリン分泌が抑えられ、血糖が脂肪へ変化しにくくなる
  • 一口30回噛むことを目安にし、早食いは控える

時間栄養学では、特に食品を食べる順序やスピードが血糖値の上昇やインスリン分泌に大きな影響を与えると考えられています。急激な血糖値の上昇はインスリンの分泌を促し、血糖が脂肪に変わりやすくなるだけでなく、インスリンの急激な上昇によってと膵臓の機能が弱くなるため、糖尿病を招く恐れがあります。

時間栄養学のポイント②:食べる時間

1日の食事は12~14時間以内に済ませる
  • 1日3食を食べる場合、朝食から夕食までの時間は12~14時間以内にすると、体内時計が乱れにくくなる
  • 夕食から次の日の朝食までに10時間空ける
朝食は起きてから2時間以内に食べる
  • 同じ時間に朝食を摂ると、起床後、内臓が効果的に働くようになる
量のバランスは3:4:3
  • 夕食は摂取したエネルギーが消費されずに脂肪として蓄積される可能性が高いため、食事量は昼食が一番多く、朝食と夕食を控えめにするのがおすすめ
  • 昼食から時間が空きすぎると、血糖値の低下や夜食での食べ過ぎを招く恐れがあるため、夕食が21時以降になる場合は、17~18時に軽食を摂るとよい

時間栄養学のポイント③:体内時計のズレをリセットする

  • 体内時計の乱れをリセットできないままだと、夜型の生活になってしまう
  • 朝の行動を変えることが、体内時計の乱れをリセットするのに効果的
リセット方法
  • 朝の光を浴びる
  • 栄養バランスのいい朝食を摂る

朝食には、炭水化物、たんぱく質を取り入れたメニューがおすすめです。朝食で摂取したエネルギーは、日中の活動で消費されます。脂肪分の多い食事を摂るなら、昼食や夕食より朝食で食べたほうが太りにくいことも、研究で明らかになっています。

まとめ:健康体を維持するために、時間栄養学の観点を理解しましょう

  • 適正体重や健康的な体脂肪率を維持するために、食事の管理は大切
  • 「いつ食事を食べるか」という時間栄養学の考えを取り入れて、より健康的な食生活を送るとよい

医師から薬剤師の方々へコメント

山本 康博 先生
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生

従来の栄養学は「何を食べるか」という疑問に対して色々な研究をしてきました。「炭水化物を制限したほうが良い」、「脂肪を制限したほうが良い」、「加工食を制限したほうが良い」、「タンパク質を多めにとったほうが良い」などありますが、全て「何を食べるか」という疑問が根底にありました。

それに対して、近年提唱されている時間栄養学は「いつ食べるか」という全く別の疑問に立脚した学問であり、今まで考えられたこともなかったことが明らかになっています。つまり、「何を食べるか」という軸に加えて「いつ食べるか」という新たな軸が加わり、現在の栄養学は二つの独立な軸で物事を考えられるようになったわけです。

たとえば、いくら健康的な栄養素からなる食事でも、夜中に食べたらやっぱりトータルで考えると健康には悪いわけです。みなさんが健康的な食事をとるうえでは、このように「何を食べるか」に加えて「いつ食べるのが良いか」という疑問も持つのが大切だと思います。