季節性情動障害とは、1年の特定の時期にだけ気分が落ち込む状態で、大きく分けて夏季うつと冬季うつがあります。この記事では、季節性情動障害について、対処法とともに解説します。
季節性情動障害とは
- 季節性情動障害とは、季節性によって感情が障害を受け、1年のうちのある時期にだけ気持ちが落ち込む状態のこと
- 「季節性うつ」と呼ばれることもある
- 代表的なものとして、夏季うつと冬季うつがある
季節性情動障害の症状
共通点
- 思い当たる原因やストレスがないにも関わらず、1年の特定の時期になるとやる気が起きない
- 体にだるさを感じる
- 精神的に不安定になる
- 決まった季節が過ぎれば症状が落ち着くため、自覚症状に気づくのが難しい
夏季うつの特徴
- 個人差はあるものの、多くの場合5月~9月ごろに症状がみられる
- 食欲不振や不眠、体重減少などの症状があらわれる
夏季うつは夏バテとの見分けが難しいですが、一般的には精神的な落ち込みがあるかどうかで判断されます。精神的な落ち込みがある場合、夏季うつが疑われます。
冬季うつの特徴
- 10月~3月ごろに症状があらわれやすい
- 夏季うつとは反対に、食欲増進(特に炭水化物や甘いものを欲することが多い)、異常に眠くなるといった症状がみられる
季節性情動障害の原因
- 現在のところ、はっきりとした原因はわかっていない
- ただ、日照時間が短い北欧で季節性情動障害の患者が多いため、特に冬季うつの発症には日照時間の長短が関係しているのではないかと考えられている
- 夏季うつは、夏ならではの環境(冷房の効きすぎ、冷たい飲食物の摂りすぎなど)や、生活習慣の変化で自律神経のバランスが乱れることが主な原因と考えられている
日照時間が短くなると日光からの刺激が減り、セロトニン(精神を安定させる作用をもつ)の分泌が少なくなります。セロトニンが不足すると、イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったりするため、冬季うつになってしまうのではないかと考えられています。
季節性情動障害の治療法
夏季うつの治療法
- 体の冷えを促すような生活習慣を避ける
- 生活習慣を見直しても症状が改善しない場合、抗うつ薬や抗不安薬などの投与が行われることもある
冬季うつの治療法
- 医学的には、光療法が行われる
- 光療法とは、専用のライトで日光に近い人工的な光を一定時間浴びる治療法。光で乱れた昼夜のリズムや体温の降下のリズムを整え、全体的な生体リズムを通常の状態に戻す効果があると言われる
- 光療法を行っても症状が改善しない場合、抗不安薬や光に対する感受性を高めるビタミンB12、抗うつ薬の投与が検討されることがある
冬季うつや夏季うつを予防するには?
夏季うつの予防
- 過度な冷房の使用は控える(室内と外気の温度差は5℃程度が理想)
- 外出時にはカーディガンなどの羽織物を持ち歩く
冬季うつ
- 毎朝しっかりとカーテンを開けて日光に当たる
- 日中は適度に外出したり、窓際に行くなどして、積極的に日光を浴びる
- 休日は室内にこもらず、できるだけ外出する
まとめ:冬や夏に気分が落ち込みやすいとき、季節性情動障害の可能性があります
- 冬や夏などの決まった時期にひどく気分が落ち込んでしまう場合、季節性情動障害の可能性がある
- 季節性情動障害は精神的な問題ではない。専門家に相談して適切な治療を受ける
- 季節が変わる前に予防策をとり、発症を防ぐ
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
決まった時期に気分が落ち込むことは、「五月病」のように極めてありふれたものです。ほとんどの場合「中だるみ」など、心理的なもののように思われがちですが、実際は栄養不足や神経伝達物質のバランスが崩れるなど、はっきりした原因があることが多いです。特に夏場は、猛暑と屋内の冷房などの寒暖差による自律神経の疲労が原因となることもありますので、予防のために環境に気を配りましょう。
一方、冬は日照時間減少によってビタミンD濃度が低下することも大きな原因となります。ビタミンDは日照に応じて皮膚で合成され、肝臓、腎臓を通って活性型となり、神経伝達物質のバランスや免疫など、さまざまな機能がありとても重要なビタミンです。このため、ビタミンDの補充は、冬季の情動障害の治療になり得ます。ただし、脂溶性ビタミンですので、過剰摂取は高カルシウム血症などの疾患の原因になり、注意が必要です。