脳梗塞とは、何らかの原因で脳に酸素と栄養を送る脳の大動脈が詰まったり、狭くなってしまった結果、脳組織が損傷してさまざまな症状を引き起こす病気です。この記事では、脳梗塞の治療で使われる薬の種類や、副作用の可能性を解説します。
脳梗塞の治療で使う薬の種類
急性期で使われる主な治療薬
- 血栓溶解薬(できてしまった血栓を分解しやすくする)
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- t-PA(アクチバシン)
- ウロキナーゼ
- 抗血栓薬・抗血小板薬(血栓をできにくくする)
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- アルガトロバン
- 抗浮腫薬(脳梗塞による脳のむくみを防ぐ)
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- グリセレブ
- マンニトール
- 脳保護剤(脳を守り、症状の悪化を防ぐ)
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- エダラボン
急性期では、主に脳梗塞の原因である血管の詰まりを解消したり、血管の詰まりによる脳の壊死・身体のむくみなどの諸症状を抑えるための薬が多く使われています。
慢性期で使われる主な治療薬
- 基礎疾患治療薬(脳梗塞の一因となる高血圧・高脂血症などを治療する)
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- カルシウム拮抗剤
- スタチン製剤
- 抗血栓薬・抗血小板薬(血栓をできにくくする)
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- ワーファリン
- アスピリン
- 脳血流改善薬(脳の血流を良くする)
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- イフェンプロジル
- 症状改善薬(脳梗塞によるその他症状を改善する)
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- 抗てんかん薬
慢性期では、脳梗塞の原因疾患の治療や血流・血栓をコントロールする薬や、後遺症を軽減するための薬が主に使われています。
脳梗塞の再発予防薬について
- 脳梗塞を発症した方は、体質や生活習慣などで血液が凝固しやすいため再発しやすい
- 再発予防のために、生涯にわたって「抗血栓薬」を服用し続ける必要がある
ただ、慢性期治療に使われる抗血栓薬は、服用を続けても効果を実感しにくいため、自己判断で服薬を中止する患者さんも少なくありません。しかし、自己判断による服薬中止によって脳梗塞を再発させる方が、実は意外と多いです。
脳梗塞は、その後の人生をともに過ごす持病であると受け止め、医師の指示する用法・用量に従って、継続的に薬の服用を続けてもらうことが再発を予防するうえでとても重要です。
脳梗塞治療薬の副作用
- 抗血小板薬や抗凝固薬などには、血を固まりにくくする効果があるため、出血しやすい、血が止まりにくいといった副作用がみられる
- ちょっとしたケガや、歯肉炎などが原因の口内の出血、皮下出血(青あざ)、内臓からの出血も止まりにくくなるため、出血がみられたら早めに医師に相談する
そのほか、胃もたれや胸やけ、頭痛、倦怠感などの副作用が起こる場合もあります。
まとめ:脳梗塞の治療に使われる薬の種類は、急性期・慢性期かによって変わります
- 脳梗塞の治療薬は、発症からの期間・症状によって変わる
- 脳梗塞の原因となる「血栓」の発生を防ぐために、血が固まりにくくなる効果のある薬が使われる
- 代表的な副作用として、出血傾向が挙げられる
- 再発予防のためには、治療薬は生涯服用し続ける必要がある
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
抗血栓薬は、多くの薬剤がある中で最も副作用に注意すべきものです。消化管出血や頭蓋内出血のリスクがあり、脳梗塞を起こした高齢者がこれらを発症すると致死的となりえます。
退薬がないことや、飲み合わせに関しては細心の注意を払う必要がありますが、しばしば見落とされることがあります。また、お薬手帳に記載されないようなOTCの医薬品 (ロキソプロフェンや魚油など)も、抗血栓薬との併用によって出血リスクを著しく高めます。
これらは医師も問診でチェックするようにはしていますが、聞き漏らすこともあります。処方する際にこれらを積極的に問診していただくことで、出血を伴う合併症の予防につながると思います。特に、脳梗塞の二次予防で抗血栓薬を内服されている方はとても多いので、問診は非常に重要なことだと思います。