「夏は元気に過ごせるのに、秋になると少しずつ元気がなくなって」「肌寒い季節になると、なんかうつっぽくなって」という方は意外と多いです。この記事では、こうした「秋うつ」と呼ばれる症状の特徴や原因、対策を解説します。
「秋うつ」の症状
- 「なんとなく気分が落ち込む」といった症状は秋(9~10月)にもみられる
- 医学的に重度のものは「季節性感情障害(SAD)」と呼ぶが、一般的には「秋うつ」といった呼び方が普及している
「秋うつ」の原因
① 日照時間が短くなり、セロトニンの分泌が減る
- セロトニンは、精神の安定を保つ働きをもつ神経伝達物質。日光に当たる時間が長くなるほど、分泌量が増える
- 秋は夏に比べて日照時間が短くなるため、セロトニンの分泌量が減ってうつっぽくなる方が増えると考えられている
② 日中と夜の寒暖差が大きくなってきた
- 自律神経には、副交感神経と、交感神経をコントロールする役割がある
- 急激な温度差は自律神経に負担をかけ、精神が不安定になりやすくなると考えられている
「秋うつ」の改善・予防法
① 外で日光を浴びる
- セロトニンの分泌量を増やすのに効果的
- 朝に日光浴をすると、セロトニン分泌が活性化するだけでなく、体内時計がリセットされて自律神経が整いやすくなる
- ただし、長時間日光を浴びすぎるとかえってセロトニンが減少してしまうため、10〜15分程度が目安
- 日差しが見えない曇り空でも、室内にいるよりはセロトニンが分泌されやすくなる
② トリプトファンを摂取する
- トリプトファンはアミノ酸の一種で、セロトニンの材料になると考えられている
- バナナやアーモンド、豆乳、ごま、肉類などに含まれている
③ 適度な運動をする
- 有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を適度に行うと、うつ症状の改善につながることがわかっている
- なるべく毎日続けて行うことで、睡眠時間や食欲も安定しやすくなる
病院で診てもらったほうがよい症状の具体例
- 夜、寝つけない
- 夜中や明け方に目が覚めてしまう
- 食欲がない
- 味覚の変化がある
- 疲れがとれない
- 理由もなく気分が落ち込むことがある
- 何もやる気が起こらないことがある
- 注意力や集中力が途切れやすくなった
- 怒りっぽく、イライラすることが増えた
秋うつに限らず、うつ症状を長く放置すると気付かないうちに症状が悪化し、日常生活に支障が出たり、治療に時間がかかったりする可能性があります。できるだけ早く専門医による治療を受けることが大切です。
まとめ:日光浴や運動習慣をつけて、秋のうつを予防しましょう
- 秋うつは、日照時間の短さによるセロトニンの減少や、急激な温度変化に伴う自律神経の乱れで発症すると考えられている
- 秋は夏と違って外で過ごしやすい。朝の散歩や運動を習慣に取り入れながら、秋うつをうまく回避するよう心がける
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
季節が変わるとなんとなく抑うつ的になる方は多いです。このうち、抑うつ症状が重度のものは明らかに病気です。うつ病や双極性障害の一部として症状が現れている場合もありますから、あまりに抑うつ的な気分が続く場合は病院に受診しましょう。
秋うつについては、日光を浴びたり、運動や睡眠を整えることも大事な治療のひとつです。曇り空でも外に出ることによる効果はありますから、散歩やジョギングなどを取り入れて、文字通り気分を変えていきましょう。