抗生物質は患者の体質、原因となる細菌に合わせて使えるよう、さまざまな種類があります。この記事では、抗生物質のうちST合剤について解説します。
ST合剤ってどんな薬?
- ST合剤は、スルファメトキサゾールとトリメトプリムを含む抗生物質の一種
- 食中毒のような発症例の多い感染症にはほとんど処方されない
- 一般的な抗生物質では十分な効き目が得られない場合や、少量ずつ長期にわたって投与が必要と判断される疾患のとき、ST合剤の処方が検討されることがある
ST合剤が処方される主な疾患
- 慢性的な呼吸器疾患
- 慢性的な膀胱炎
- ペニシリン体性肺炎球菌
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染症
- ニューモシスチス肺炎
ST合剤の働きは?
- 細菌がDNA複製のために葉酸を合成する過程を2段階で阻害し、細菌の増殖を防ぐことで殺菌・抗菌効果をあらわす
- 第1段階:スルファメトキサゾールが合成に必要な酵素の働きを阻害し、ジヒドロ葉酸の生成を止める
- 第2段階:トリメトプリムがジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に活性化させる酵素の働きを阻害する
主なST合剤の治療薬
注射剤
- バクトラミン®︎注
内服薬の錠剤
- バクトラミン®︎配合錠
- ダイフェン®︎配合錠
- バクタ®︎配合錠
内服薬の散剤
- ダイフェン®︎配合顆粒
- バクタ®︎配合顆粒
- バクトラミン®︎配合顆粒
ST合剤の副作用は?
比較的軽度の副作用
- 皮膚症状(発疹、じんましん、かゆみ、赤い斑点、水疱などを伴うもの)
- 消化器症状(吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、食欲不振などの症状を伴うもの)
- 頭痛
- めまい
発症頻度はまれだが、重篤な状態になりやすい副作用
- 血液障害(白血球や赤血球、血小板が急激に減少する)
- 血液障害による貧血や発熱、急な高熱、のどの痛み、皮下や歯茎などからの出血、さかむけなど
アレルギー体質の方の場合、ST合剤を服用し始めたときにアナフィラキシーショック(呼吸困難や意識の消失など、強いショック症状を伴うもの)を引き起こす恐れがあります。
まとめ:ST合剤は特定の疾患治療を中心に処方されます
- ST合剤は、ほかの抗生物質で十分な効果が得られない場合や、腎臓・膀胱・肺など徳敵の臓器や部位の疾患治療で処方されることがある
- アレルギー体質の方が服用すると副作用を引き起こす恐れがある
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
ST合剤は、尿路感染症の治療や、副腎皮質ステロイドを内服中の方の感染予防のために処方されることが比較的多い薬です。セフェム系など、一般的な抗生物質が無効の場合でも使用可能なことが多いことから、医師によっては積極的に処方する場合もあります。
しかし、同時にアレルギーや肝障害、特徴的な副作用として血球減少が起こることもあるため、モニタリングが必要な薬剤でもあります。こうした注意点は、きちんと伝えるようにしましょう。