カルバペネム系抗生物質は、尿路感染症や副鼻腔炎など、細菌が原因の病気に効果を発揮する薬です。この記事では、カルバペネム系抗生物質の特徴や副作用について解説します。
カルバペネム系抗生物質とは
- グラム陽性菌から陰性菌まで、効果を示す範囲が広い抗生物質
- イミペネムやメロペネムなどがある
- イミペネムは陽性球菌に抗菌活性を示し、メロペネムは陰性桿菌に抗菌活性を示す
カルバペネム系抗生物質に自然耐性を持つ細菌として、マイコプラズマ、MRSA、クラミジア、真菌、レジオネラなどがあります。
カルバペネム系抗生物質の働きは?
- カルバペネム系抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害して抗菌作用をもたらす
- ペニシリン結合タンパク質[PBP]と結合し、細胞壁の合成をブロックする
主なカルバペネム系抗生物質の治療薬
- メロペン®︎
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- 従来のカルバペネム系抗生物質の治療薬に比べて中枢神経系への影響が少なく、意識障害やけいれんなどを引き起こす確率も低い
- 腎障害を引き起こす腎毒性も、従来の治療薬より少ない
- オラペネム®︎
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- 子供の肺炎や副鼻腔炎、中耳炎などの治療で用いる内服薬
- フィニバックス®︎
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- 尿路感染症や呼吸器感染症などの原因となる「緑膿菌」に高い抗菌作用を発揮する薬
- 従来のカルバペネム系抗生物質に比べると中枢神経系への影響が小さく、けいれんや意識障害などを起こす確率が低い
- 腎障害を引き起こす腎毒性も、従来の治療薬より軽減されている
カルバペネム系抗生物質の副作用
- 中枢神経障害
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- 頻度は非常に低いが、意識障害や痙攣が起きることがある
- 消化器症状
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- 下痢や嘔吐などが起きることがある
- 腎機能障害
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- 頻度は非常に低い
- 体がだるい、発疹、尿がほとんど出ない、尿量が減る、むくみなどの症状がみられたら注意が必要
- てんかん発作
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- カルバペネム系抗生物質を服用後、バルプロ酸の血中濃度が低下する傾向があるため、てんかん発作を起こすリスクが高まる
なお、カルバペネム系抗生物質とバルプロ酸ナトリウムの併用は禁止されています。
まとめ:カルバペネム系抗生物質には幅広い抗菌作用があります
- カルバペネム系抗生物質は、さまざまな細菌に効果がある抗生物質
- 下痢や嘔吐、中枢神経障害などの副作用もある
- ただし、カルバペネム系抗生物質との併用が禁止されている薬などもある
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
カルバペネム系抗生物質は非常に幅広く使われている抗生物質です。起因菌がはっきりせず、抗生物質のカバーが外れた場合、死に至るような重篤な状態であれば優先的に使用すべき薬剤のひとつですが、そうでない場合も含めて闇雲に使用するような抗生物質ではありません。
現在はどこの病院でも使用状況がモニタリングされていることが多いですが、もし乱用されている状況であれば、耐性菌の出現を防ぐため、すぐに改善が必要と言えます。