不整脈がみられたときに使われる薬のひとつに「Naチャネル遮断薬」があります。この記事では、Naチャネル遮断薬の働きや薬の種類、副作用について解説します。
Naチャネル遮断薬はどんなときに服用する薬?
- 抗不整脈薬は作用によってⅠ~Ⅳ群に分類されるが、Naチャネル遮断薬はⅠ群に属する
- Naチャネル遮断薬は、Naチャネル遮断以外の作用や特徴によってⅠa群、Ⅰb群、Ⅰc群に分類される
- ナトリウムイオンの通り道であるNaチャネルを遮断し、脈を整える働きを持つ
主なNaチャネル遮断薬
Ⅰa群に分類される薬
- ジソピラミド(商品名:リスモダン®︎)
- シベンゾリンコハク酸塩(商品名:シベノール®︎)
電気信号がおさまるまでの時間を延長させる働きがあります。
Ⅰb群に分類される薬
- Ia群の特性も合わせ持つアプリンジン塩酸塩(商品名:アスペノン®︎)
- メキシレチン塩酸塩(商品名:メキシチール®︎)
電気信号がおさまるまでの時間を短縮する働きがあります。
Ⅰc群に分類される薬
- ピルシカイニド塩酸塩水和物(商品名:サンリズム®︎)など
電気信号がおさまるまでの時間を変えない働きがあります。
なお、薬によっては複数の作用を持つものもあります。
Naチャネル遮断薬の副作用と、服用時の注意点は?
- 消化器症状
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- 吐き気
- 食欲不振
- 精神神経系症状
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- めまい
- ふらつき
- 頭痛
特に、リスモダン®︎には抗コリン作用があるため、口渇、排尿困難などが起こる恐れがあります。程度は多少弱くなるものの、シベノール®︎にも同様の副作用がみられます。また、アスペノン®︎を過剰摂取すると精神神経系症状が出やすくなるため、注意が必要です。
これらの薬は、まれに不整脈を悪化させたり、新たな不整脈を誘発することもあります。
まとめ:Naチャネル遮断薬は、Naチャネルを遮断して脈を正常化します
- Naチャネル遮断薬はⅠ群抗不整脈薬のひとつ。心筋細胞への電気信号の乱れを整える
- 頻脈をはじめ、不整脈の治療に使われる
- 消化器系症状や精神神経系症状といった副作用があらわれることがある
- まれに不整脈を悪化させたり、新たな不整脈を誘発する場合もある
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
Naチャネルは、細胞の内外でのナトリウム濃度勾配を形成する役割を担っています。ナトリウムなどのイオンの濃度勾配は、そもそも生命の誕生に非常に重要であった言われているもので、生命活動の根幹です。実際、血中のナトリウム濃度は非常に厳密に制御されており、わずかなナトリウム濃度の変化がさまざまな症状を引き起こします。
このことを踏まえると、Naチャネル遮断薬は非常に注意して使用すべき薬であることは明らかだと思います。副作用のマネジメントにも注意が必要で、基本的には不整脈について熟知している循環器内科の医師など、専門性の高い医師しか処方すべきではないと考えます。
Naチャネルは普遍的に存在しますから、副作用もきわめて多様となります。また、これらの副作用の中は指摘されないとなかなか気づかないことが多いです。たとえば副作用に嘔気などの消化器症状がありますが、実際は「なんとなく食欲がない」程度の自覚しかなく、薬の副作用だと気づいていないことが多いです。ですので、これらを具体的に問診していただくことが、副作用管理に有用であると思います。