COPDとは、気管支や肺に炎症などが起こって呼吸機能が低下する疾患です。この記事では、COPDと診断された場合に使われる治療薬を中心に解説します。
COPD治療、最初の一歩は?
- 禁煙が最も重要
- 喫煙している限り炎症は続き、症状が進行する。きっぱりやめることが治療の最初の一歩
なかなか禁煙できない方は、薬局などで販売している禁煙補助薬(ニコチンパッチやニコチンガムなど)の利用がおすすめです。また、禁煙外来に通い、専門医の指導のもとで非ニコチン製剤の飲み薬を使って禁煙する方法もあります。なお、薬物療法による禁煙治療は、喫煙年数や1日の吸う本数などによって保険適用の対象になることもあります。
COPDの治療で使われる薬は?
- COPDの治療薬は、気管支を広げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」が中心
短時間作用性抗コリン薬・短時間作用性β2刺激薬
- 運動時や入浴時など、日常生活での呼吸困難の予防に効果的
- 気管支を拡げる作用は抗コリン薬の方が強く、拡げるまでの時間はβ2刺激薬の方が速い
長時間作用性抗コリン薬
- COPD患者に最も効果がある気管支拡張薬
- 長期間使用しても効果が弱まらない
- 1回の吸入で作用が12~24時間続き、呼吸機能の改善効果が翌朝まで認められる
- 閉塞隅角緑内障の患者さんに使用してはいけない
- 前立腺肥大症の患者さんの場合、まれに排尿困難症状を悪化させることがある
長時間作用性β2刺激薬
- 1回の吸入で作用が12~24時間続く
- 長期間使用しても効果が弱まらない
- 日本では、効果は劣るものの、貼付タイプのβ2刺激薬が使われることもある
長時間作用性抗コリン薬・β2刺激薬配合薬
- 作用機序と時間が異なる薬剤の効果を得て、さらに副作用のリスクが低下する
- 単体で使った場合と比べて閉塞性障害や肺過膨張効果が大きく、息切れも改善できる
メチルキサンチン
- 一般的に、吐き出す力の改善効果は吸入タイプの気管支拡張薬よりも弱い
- 長時間作用性β2刺激薬を併用すると、気管支拡張効果が上乗せされたとの報告がある
- 副作用として吐き気や不整脈があるため、血中濃度をモニタリングしながらの使用が推奨される
そのほか、QOLを改善する目的で、喀痰調整薬や抗生物質が使われることもあります。
なお、以前は長期間作用性β2刺激薬とステロイド薬を併用することもありましたが、現在では息切れなどの症状が強く、憎悪を起こしやすい場合のみ(喘息とCOPDの合併症など)に限定されています。
COPDの方は、ワクチン接種もお忘れなく!
- COPDの方は感染症にかかると重症化しやすく、COPDの症状自体も悪化しやすい
- 特に、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは接種したほうがよい
- 本人はもちろん、介助者も接種する
まとめ:COPDの治療には、主に気管支拡張薬が使われます
- COPDの治療には、主に気管支拡張薬が使われる
- 症状が軽い場合は短時間作用性の薬剤を、毎日定期的に服用する場合は長時間作用性の薬剤を使用する
- 必要に応じて喀痰調整薬や抗生物質などを使う場合もある
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
COPDの治療薬の主軸は、圧倒的に吸入デバイスを用いた気管支拡張薬です。臨床疫学研究ではとても好ましい結果をもたらしています。しかし、実際のCOPDの治療ではうまくいかないことが多いです。その理由として、
といった患者コンプライアンスや指導の問題が考えられます。
COPDの患者さんは、ほぼ全員過去に重喫煙歴がある方で、なかには治療と並行して禁煙をする方もとても多いです。このため、禁煙自体がとても大変であることを医療者が理解することが大切だと思います。これらは医者にはかなり申告しづらいことであり、「実はタバコ吸っちゃうんだよね…」などと看護師さんなどに言っている患者さんも多くいます。
この患者コンプライアンスを改善することが治療において最も大切であり、薬局でもチラッとお話しいただくと、良い薬の効果を活かせると思います。