ビタミンB1は水溶性ビタミンのひとつで、体内でブドウ糖がエネルギーに変わるときに重要な役割を担う栄養素です。この記事では、ビタミンB1の働きや1日あたりの摂取量の目安、食事で摂るときのポイントを紹介します。
ビタミンB1の働きは?
- ビタミンB1は最初に発見されたビタミン。科学的には「チアミン」とよばれる水溶性の栄養素
- 補酵素として大切な役割を持つ
- 不足すると糖代謝に支障が生じ、乳酸などの疲労物質が溜まりやすくなる
- 水溶性ビタミンなので体に蓄積されない反面、不足しやすく、特に、甘い物やお酒が好きな方や白米を大量に食べる方は不足しがち
また、脳などの神経細胞はブドウ糖のみをエネルギー源とするため、脳や神経を酷使する方も多くのビタミンB1が必要となります。
ビタミンB1を多く含む食べ物は?
- 肉類や魚類(特に豚肉や魚の血合やうなぎの蒲焼き)
- 酵母や大豆などの豆類
- 玄米や全粒粉などの穀類
穀類のビタミンB1はぬかや胚芽に多く含まれているため、精白米では含有量が少なくなります。また、ビタミンB1はニンニクやタマネギなどに含まれているアリシンと結合すると吸収率が高くなるため、一緒に食べるのがおすすめです。
ただし、ビタミンB1は水溶性で熱に弱く、調理で失われやすいため、日ごろから多めに摂りましょう。また、ゆでて食べたいときは、スープやお鍋など、ゆで汁も一緒に食べる料理にすると、ゆで汁に溶けた栄養素も残さず摂取できます。
1日に必要なビタミンB1は?
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、1日当たりの推奨量を以下のように定めています。
- 男性
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- 18~49歳:1.4mg
- 50~69歳:1.3mg
- 70歳以上:1.2mg
- 女性
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- 18~49歳:1.1mg
- 50~69歳:1.0mg
- 70歳以上:0.9mg
ただし、糖質をよくとる方や体をよく動かす方は、上記以上のビタミンB1が必要です。
ビタミンB1が不足するとどうなる?
- ブドウ糖から十分にエネルギーを作れなくなるため、食欲不振、疲労、だるさなどがみられる
- 脳や神経に障害を起こすこともある
- 重症化すると脚気(足の浮腫、しびれ、動悸・息切れ)やウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)を起こし、命に関わる危険性もある
まとめ:ビタミンB1は豚肉など肉や魚類、酵母、豆類などに含まれます
- ビタミンB1は、チアミンとよばれる水溶性の栄養素で、ブドウ糖をエネルギーに変えるのに欠かせない栄養素
- 不足すると、疲れやすくなったり、脳神経に影響を与えたりする
- 肉類や魚類、中でも豚肉や魚の血合部分に多い。酵母や大豆などの豆類、玄米や全粒粉などの穀類などにも含まれる
- 水や熱で失われやすいため、調理法を工夫して取り入れる
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
バランスの良い食生活をしていれば、ビタミンB1が不足するということはまずありません。実際、ビタミンB1の補充が必要なのは、ウェルニッケ・コルサコフ症候群を疑うときや、アルコール多飲歴、依存歴がある方の意識障害などに限られます。しばしば点滴でビタミンB1の補充も行われますが、ほとんどはエビデンスに乏しく、気休めのような意味合いが強いです。また、継続的に内服でビタミンB1を処方されている方は時折見かけますが、本当に必要かどうかは疑問を持ったほうがよいこともあります。