加齢とともに、健康診断で血中コレステロール値の上昇を指摘されることも増えてきます。健康を維持しつつ、血中コレステロールを下げるために、普段からどのような食事を摂ればよいのでしょうか。
血中コレステロールを下げる食事のポイント
- 血中コレステロールのうち、80~90%は肝臓で合成されて作りだされたもの
- 血中コレステロールを下げるためには、コレステロールを多く含む食品を控えるのではなく、合成させやすい食品を減らしていく
- コレステロールがどれくらい合成されるかは、食事による脂肪の摂り方によって変わる
- 同じ脂肪(脂質)でも、「飽和脂肪酸」をたくさん摂ると合成量が増え、「不飽和脂肪酸」をたくさん摂ると合成量が減る
食事で血中コレステロールを減らしたい場合、基本的には肝臓でのコレステロール合成を促進する飽和脂肪酸の摂取を減らすとともに、合成を抑える不飽和脂肪酸の食べ物を増やす必要があります。
コレステロールを下げる食事①:食物繊維を摂取する
- 食物繊維は、腸内のコレステロールを包み込み、老廃物として体外へうまく排出してくれる
- 毎日のごはんを玄米にしたり、野菜や海藻の味噌汁を食べるだけでも、食物繊維を多く摂取できる
食物繊維が豊富な食べ物
- 野菜類
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- ごぼう
- しいたけ
- ひじき
- わかめ
- ブロッコリー
- キノコ
- 豆類
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- 豆腐
- 納豆
- 豆乳
- みそ
- 大豆の水煮など大豆食品
- 穀類
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- 玄米ご飯
- 全粒粉
血中コレステロールを下げる食事②:肉より魚や大豆製品を食べる
- 飽和脂肪酸を多く含む食品
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- 脂身の多い肉
- 加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)
- 揚げ物(ポテトチップス、ドーナツ、フライめんなど)
- 洋菓子(チョコレート、ビスケット、ケーキなど)
- 不飽和脂肪酸を多く含む食品
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- 植物油(大豆油、菜種油、ごま油など)
- 大豆食品(豆腐、油揚げ、厚揚げ豆腐、味噌など)
- 魚介類
- 魚卵
飽和脂肪酸は肉類に、不飽和脂肪酸は大豆食品や魚介類に多く含まれています。特に、さばやいわし、さんまなどの青魚には、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らすDHAやEPAが含まれています。また、大豆や大豆食品にも悪玉コレステロールの値を低くする作用が期待できます。
このため、最低でも1日1食は主食に青魚や厚揚げ・油揚げなどを使った料理をメインのおかずにしたり、毎日みそ汁を飲むことが有効な対策になります。
血中コレステロールを下げる食事メニュー③:コレステロールを「下げる」「変えない」食べ物を選ぶ
- 血中コレステロールを下げる、もしくは数値に影響しない食品を選ぶ習慣を身につける
- ただし、どうしても血中コレステロールを上げやすい食品を食べたいときは、無理に控えない
- 血中コレステロールを下げる食品をバランスよく、複数の種類を食べるよう心がける
- 下げる食品の代わりに、血中コレステロール値を変えない食品(魚卵や鶏肉、和菓子など)でもよい
血中コレステロールを下げる食品しか食べない、といった極端なことはせず、数値を変えない食品や、たまに数値を上げてしまう食品も取り入れながら改善を目指しましょう。
まとめ:血中コレステロールを合成しにくく、体外に排出する作用のある食品を積極的に食べましょう
- 血中コレステロールのほとんどは、食事から吸収されたものではなく、肝臓で合成されたもの
- コレステロール含有量の多い食品を極端に避けるより、肝臓でのコレステロール合成を減らせる食事にした方が、数値減少の効果を期待できる
- 飽和脂肪酸を多く含む食品を控えつつ、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含む食品を継続的に食べて、血中コレステロールを下げていく
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
体内に存在するコレステロールのほとんどは肝臓で合成されたもので、食事から受ける影響はあまり強くありません。本記事にあるような食事の注意点は、コレステロール値の側面以外でも健康全般に良い影響をもたらすと考えられますので、コレステロール値を下げる効果があまり高くないとしても推奨されるものです。
悪玉コレステロール(LDL)値は遺伝による影響が強く、どんなに健康的な食事をとっても下がらない方もいらっしゃることは胸に留めていただくとよいと思います。そのような方はスタチンの良い適応ですので、問診をしていただいて家族性が疑われるような場合は、受診も推奨していただくとよいと思います。