抗生物質にはさまざまな種類がありますが、この記事ではホスホマイシン系抗生物質について、その働きや治療薬の種類、そして想定される副作用について解説します。
ホスホマイシン系抗生物質の働き
- ペプチドグリカンの働きを初期の段階で妨害し、抗菌作用を発揮する薬
- プロテウス菌、セラチア菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌など、比較的多くの病原菌に効果がある
- 同じ効果を得るために、投与量を徐々に増やす必要がないのも特徴
ホスホマイシン系抗生物質は、嫌気性菌が繁殖しやすい場所でも活発に働き、特に腸管感染症に有効な抗生物質といわれています。注射剤、内用薬は血液感染症、呼吸器感染症、泌尿器感染症、婦人科感染症など、広範囲の感染症治療に、点耳剤は外耳炎や中耳炎の治療に用いられています。
主なホスホマイシン系抗生物質
- ホスホマイシンカルシウム(商品名:ホスミシン®︎、ホスミシン®︎S)がある
- ホスホマイシンカルシウムには錠剤やシロップのほか、点滴静脈注射用のものがある
- 中耳炎や外耳炎の治療には、点耳薬が処方されることもある
ホスホマイシン系抗生物質の副作用は?
- 皮ふ症状:発疹、かゆみ、じんましんなど
- 消化器症状:下痢、吐き気、腹痛など
- 肝機能障害:全身倦怠感、食欲不振、黄疸など
ホスホマイシンの注射製剤はナトリウムを含むため、心不全、腎不全、高血圧などの持病がある方は特に注意が必要です。血管痛、潮紅、発熱、腎機能障害、知覚減退なども報告されています。
そのほか、まれに呼吸困難や血圧低下、動悸息切れ、のどの痛み、歯ぐきの出血、発作的な筋肉の収縮などがあらわれたら、重大な副作用の初期症状である可能性があります。
まとめ:細菌の細胞壁の合成を早期に止める抗生物質で、多くの感染症で使われます
- ホスホマイシン系抗生物質は、細胞壁を合成する主要な物質の働きを初期の段階で妨害する
- 注射剤や内用薬としてさまざまな感染症に用いられるほか、点耳剤として外耳炎や中耳炎の治療にも使われている
医師から薬剤師の方々へコメント
前田 裕斗 先生
ホスホマイシンはよく処方される内服抗生物質のひとつですが、経口生物学的利用能は40%程度と低く、使用にあたって過信は禁物です。
内服抗生物質にありがちなことに「使用後に余ってしまう」ことがありますが、処方された時と違う感染症に使うのは禁物です。また、同じ場合に使うとしても症状がよくならない場合も特に注意が必要です。たとえば膀胱炎に対して処方してもよくならない場合、腎盂腎炎まで進展しているために効果が不十分となっている場合もあります。使いやすい薬ですが、他の抗生物質と同じく、処方された分は必ず飲み切ること、症状がよくならない場合は医師に相談するよう伝えることも心がけましょう。