私たちの体や髪をはじめ、お皿や住居、洗濯物など、さまざまなところをきれいにするために使われる石鹸にはいくつか種類があります。この記事では、石鹸のうち「逆性石鹸」の特徴について、普通の石鹸の違いや使用するメリットを中心にご紹介します。
逆性石鹸と普通の石鹸の違いは?
一般的な石鹸
- 水に溶けると、水中でアニオンと呼ばれる陰性の電気を帯びる
- 布などに染み込んで汚れを剥がし、浮かせて落とす
- アルカリ性
逆性石鹸
- 水に溶けると、水中でカオチンと呼ばれる陽性の電気を帯びる
- 汚れを落とす効果はほとんどないが、細菌やカビを破壊する
- 弱酸性
逆性石鹸は、医療現場の器具消毒(塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウム)やトローチやうがい薬(塩化セチルピリジニウム)に使われています。
逆性石鹸を使うメリットは?
- 対象物を殺菌・消毒し、感染症やカビの繁殖を抑える
- 気になる臭いを抑える
逆性石鹸は一般家庭でも使用できます。その場合、用途にあわせて希釈の濃度や使い方を変える必要があります。
調理器具などを消毒する場合
- 200~500倍程度に希釈した逆性石鹸水に、消毒したいものを5分ほどつけ置きする
- つけ置き後は自然乾燥させるだけでよいが、直接口に入れるもの(食器など)は水洗いする
- つけ置きできないもの(家の床・家具・手すりなど)を消毒したい場合は、同じ濃度に希釈した逆性石鹸水を含ませた布で拭くか、噴霧する
洗濯物のカビ臭予防に使う場合
- 200~1000倍程度に希釈した逆性石鹸水に洗濯物をつけ置く
ただし、一般的な洗濯洗剤と逆性石鹸を一緒に使うとお互いの効果を打ち消します。先に一般的な洗剤で物理的な汚れを落とし、すすぎ終えてから逆性石鹸を使用してください。
カビが生えたところを掃除したい場合
- 表面のカビを水拭きで取り除き、乾かす
- 200~500倍に希釈した逆性石鹸水につけ置きする
- つけ置きできないものは、同じ濃度に希釈した逆性石鹸水を含ませた布で拭くか、噴霧する
ゴミ箱周辺の消臭に使う場合
- ゴミや食べ物などを取り除いた後、100~200倍に希釈した逆性石鹸水を噴霧する
- 噴霧だけでは効果が実感できない場合は、臭いのもととなっている部分を逆性石鹸水を含ませた布で拭きとるか、こまめに噴霧する
なお、カビの胞子が飛び散っている可能性の高いところにも逆性石鹸を噴霧し、乾かしておくとより効果的です。
手指の消毒のために使う場合
- 一般的な石鹸で手を洗った後に逆性石鹸を使う
逆性石鹸のデメリットは?
- インフルエンザウイルスやロタウイルス、ノロウイルスなどのウイルス類に対して殺菌・消毒効果を表さない
逆性石鹸が細菌やカビを除去できるのは、逆性石鹸自体が陽性の電気を帯び、陰性の電気を帯びる細菌・カビ内のタンパク質やセルロースに反応して殺菌・消毒作用を発揮するためです。ウイルス類は細菌やカビと基本構造が異なるため、逆性石鹸で消毒・殺菌できません。
逆性石鹸を使うときの注意点は?
- 原液のまま使うと皮膚の炎症や消毒物の変質を招く恐れがあるため、必ず用途に合った濃度に薄めて使う
- 希釈時は手袋を着用し、原液に直接触れないようにする
まとめ:逆性石鹸は細菌やカビに対して効果を発揮する石鹸です
- 逆性石鹸は、目に見えない細菌やカビを落とす効果がある
- 一般家庭でも消毒・掃除用洗剤として利用できる
- 使用にあたっては、原液を用途にあった濃度に希釈する必要がある
医師から薬剤師の方々へコメント
山本 康博 先生
逆性石鹸は一部のウイルスに対しては消毒効果を示さない、と一般には言われています。実際、厚生労働省のサイトの「ノロウイルスに関するQ&A」では、2015年までは「ノロウイルスの失活化には、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)はあまり効果がありません」との記載がありましたが、現在はそうした表現はなくなっています。必ずしも効果がないとは言えないものの、まだ議論の余地があるようです。